Micron Technologyが発表した新SSDは、200層以上に積層したNAND型フラッシュメモリを搭載したメインストリーム向けのSSDだ。このSSDには、SSD市場の“ある動向”を反映した興味深い進化が見られた。
「SSD」は容量や読み書き性能を含めて、さまざまな点で面白い進化が続いている。Micron Technologyは2023年10月、200層以上に積層したNAND型フラッシュメモリ搭載の新SSDを発表した。この製品にも、SSDとしての興味深い進化が見られた。
Micronが今回の新SSDの特徴として挙げるのは、メインストリーム向けSSD(または読み取り集約型SSD)であることだ。調査会社の各アナリストが注目するのも、メインストリーム向けであることと、搭載するNAND型フラッシュメモリの積層数についてだ。その背景には、SSDの進化と市場に関する“ある動向”が関係している。Micron製SSDのスペックを踏まえて解説しよう。
Micron Technologyが2023年10月16日(現地時間)に発表したSSD「Micron 7500 NVMe SSD」(以下、Micron 7500)は、232層NAND型フラッシュメモリを搭載したメインストリームSSDだ。
Micron 7500は、Micron製品のライアンアップとしては「Micron 7450 NVMe SSD」に続くモデルだ。これらのSSDは、汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI Express」(PCIe)による接続を必要としているものの、“最上位の高速性”を必要とはしていない、読み取り集中型の用途での利用を想定している。
市場調査会社IDCのリサーチ担当バイスプレジデントであるジェフ・ヤヌコビッチ氏は「Micron 7500はPCIe市場の動向を反映したものだ」と指摘する。このコメントの真意を伝えるには、SSD市場のある動向についてまず説明する必要がある。
ストレージの通信プロトコル「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)が登場した当初、その普及を支える推進力は、読み書き速度の高速さというパフォーマンス面での利点だった。PCIeの規格も高速化の要望に応えるようにして、世代が新しくなるたびにデータ転送速度が高速化してきた。ただしそうしたパフォーマンス面での利点を最大限に引き出せるSSDは、他のSSDに比べて価格が高くなる傾向にある。SSDを利用する全ての用途が、最高レベルの読み取り速度と書き込み速度を必要とするわけではない。そうした事情から、パフォーマンスと価格のバランスを追求するメインストリームSSDの道が開かれたのだ。
Micron 7500は読み取り重視のモデル「PRO」と、PROよりも書き込みを想定したモデル「MAX」を用意している。MAXは、1日当たりの書き込み数と、容量のラインアップがPROとは異なる仕様だ。
調査会社Gartnerでリサーチ担当バイスプレジデントを務めるジョセフ・アンスワース氏は「Micron 7500は、メインストリームという位置付けの割には、優れたパフォーマンスを期待できる」と語る。この特性から、Micron 7500は“革命的”とまではいかなくても、かなり進化した製品だとアンスワース氏は評価している。「232層の積層技術を採用した点では技術的にハイレベルなSSDであり、その一方で価格面はサステナブル(持続可能)な程度を視野に入れていると考えられる」(同氏)
Micronの公式資料によると、Micron 7500の主要なスペックは以下の通り。
2023年にMicronが発表したハイエンドモデル「Micron 9400 NVMe SSD」と比べてみよう。Micron 9400は、176層NAD型フラッシュメモリを搭載したエンタープライズ向け(大規模システム向け)SSDだ。ランダムリードは最大で160万IOPS、ランダムライトは最大60万IOPSとなっており、Micron 9400の方が高い。
次回は、Micronの新SSDがストレージ市場においてどのような立ち位置にあるのかについて、HDDの現状を踏まえて解説する。
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