いまさら聞けない「ソフトウェア開発者」の“専門分野の違い”とは?ソフトウェア開発者のキャリアガイド【第1回】

ソフトウェア開発者は、ビジネスにおいてますます重要な役割を担うようになっている。今後、キャリアアップを目指す開発者は、どのような専門性を身に付けていると有利なのか。

2024年08月29日 08時30分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む現代のビジネスにおいては、ソフトウェア開発のスピードと品質が企業の成功の鍵を握っているといっても過言ではない。企業にとって「ソフトウェア開発者」という職業の重要性は増している。

 ソフトウェア開発者に求められるスキルや役割は、担当する分野やプロジェクトの特性によって大きく異なる。ソフトウェア開発者として活躍するためには、どのような専門性を持つべきなのか。

「ソフトウェア開発者」に求められる“専門性”とは?

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 ビジネスのデジタル化を支えるソフトウェア開発のスピードは、ますます加速している。ソースコード共有サービス「GitHub」を運営する企業GitLabが2024年6月に公表した「年次グローバルDevOps(開発と運用の融合)レポート」によると、約69%のCxO(企業の経営幹部や最高責任者)が「2023年と比較して、少なくとも倍の速さでソフトウェアをリリースしている」と回答した。調査は2024年4月に、世界中の5300人以上の経営幹部(CxO)、ITリーダー、開発者、セキュリティおよび運用の専門家を対象に実施した。

 開発者がビジネスに与える影響は非常に大きい。革新的な製品を他社に先駆けてリリースしたり、優れたUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供したりするには、開発者の存在が不可欠だ。。ソースコード共有サービス「GitHub」を運営するGitHub社でAPAC(アジア太平洋地域)フィールドサービス部門シニアディレクターを務めるピエルルイジ・カウ氏は、「先進的な企業は、戦略成功の鍵は開発者が握っていることを理解している」と話す。

 ソフトウェア開発は、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の各段階――計画、設計、コーディング、テスト、保守――から成り立つ。新規ソフトウェアの開発であっても、既存ソフトウェアへの新機能追加やバグの修正であっても、SDLCに沿って進められる。

ソフトウェア開発における専門分野とキャリアの展望

 ソフトウェア開発には、幾つかの専門的な役割が存在する。技術研修ベンダーHeicoders Academyの共同創設者コン・ユイ・ニン氏は、主なものとして以下の4つを挙げる。

  • フロントエンド開発
    • UI(ユーザーインタフェース)の構築と、スムーズなUXの実現に重点を置く。
    • EC(Eコマース:電子商取引)サイトの場合、Webサイトのレイアウトやクリックボタンのデザインなど、エンドユーザーに見える部分全般を担当する。
  • バックエンド開発
    • データベースやサーバロジックなど、Webサイトを動かす裏側を担当する。
    • ECサイトの在庫管理や注文処理などのプログラムを構築したり管理したりする。
  • フルスタック開発
    • フロントエンド開発とバックエンド開発の両方、つまり、アプリケーション全体の構築、保守を担当する。
    • ECサイトの場合だと、UIとサーバロジックの両方を開発する。
  • DevOps
    • CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を導入して自動化を進め、運用チームと連携し、ソフトウェアの開発から運用までのプロセスを効率化する。アプリケーションのセキュリティを確保したり、必要に応じた機能追加や修正を容易にしたりする役割もある。

 コン氏は、ソフトウェア開発者を目指す人たちに、自身の関心や強みに合わせて専門分野を選ぶように勧める。例えば、デザインやエンドユーザーからのインタラクション(システムとやりとりする動作や反応)に関心がある人は、フロントエンド開発が向いている。データやサーバロジックの仕組みに関心がある人は、バックエンド開発が適している。

 両方に関心がある場合は、フルスタック開発が理想的だ。ソフトウェアをスムーズかつ効率的に動作させることに関心がある場合は、DevOpsが適するだろう。「まずは個人で開発してみて、開発のさまざまな側面を経験し、最も楽しいと感じる分野を見極めるのがお勧めだ」と同氏は語る。

 DXベンダーTemusでテクノロジー部門のマネージングディレクターを務めるラジェシュ・ラオ氏は、ソフトウェア開発における他の役割についても挙げる。

  • テクニカルリード
    • 技術面でのリーダーシップを発揮し、チーム全体の技術力と生産性の向上に貢献する。例えば、適切なソリューションを実装できるように、開発者チームに働きかける。
  • アーキテクト
    • プロジェクト全体の技術的な成功を確保するために行動する。システム全体の設計を担当してビジネスニーズに応じてアーキテクチャを定義、実装したり、顧客やチームメンバー、他部門との効果的なコミュニケーションを実現したりする。
  • ビジネスアナリスト
    • プロセス改善やデータ分析を通じて組織の目標達成を支援する。例えばビジネス要件を定義し、どのような機能を実装すればいいのかを決めたり、優先順位を付けたりする。
  • テストリード
    • テストチームのリーダーとして、アプリケーションを効果的にテストできる仕組みを整えるなどテストプロセス全体を管理し、品質保証の中心的な役割を果たす。

 次回は、ソフトウェア開発で代表的なプログラミング言語や開発ツール、開発手法を解説する。

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