米Microsoftのタブレット用OS「Windows RT」の売り上げが振るわない。米IDCのアナリストは、「Windows 8」との併売による混乱が原因だと指摘する。新規分野に進出した「Xbox」のように市場で定着するためには?
タブレット向けに2種類のOSを用意するという米Microsoftの戦略は、コンシューマーを混乱させ、買い控えにつながっている。Microsoftは、Windows 8に注力してシェア拡大を目指すべきだと、米調査会社IDCのアナリストは進言する。
IDCのタブレット担当リサーチディレクターであるトム・マイネリ氏は、タブレット市場の動向を伝える報告書「Worldwide Quarterly Tablet Tracker」の最新版で、2種類のタブレットOSを売り出すというMicrosoftの決断は功を奏していないと分析している。2種類のOSの存在は混乱を招き、Windows RTの売り上げの障害になっている。
「Windows RTで問題になっているのは、価格と利用方法がコンシューマーに見えにくいことだ」とマイネリ氏は言う。「従来、Windowsといえば上位互換性があり、どのバージョンでもソフトウェアを実行できるOSを思い浮かべる。一方でWindows RTは、こうしたOSとは一線を画している。Windows RTを支持する技術的な理由はある。だがWindows RTを何としても購入したくなるような理由をMicrosoftは打ち立てられていない」(マイネリ氏)
定価500ドルからのWindows RTタブレット端末は、Appleの「iPad」と真っ向から対立する。最高の条件が整えば善戦が期待できるが、現状はMicrosoftにとってベストではない。Microsoftは、タブレット端末「Surface」のリリースから90日以内に10万種類のアプリケーションをそろえると公言していたが、約5カ月たった時点で提供されているのは5万種類ほどだ。
「アプリケーション不足は今後も問題になるだろう。米Appleの『iTunes』などそれまで使えていたアプリケーションは、当然Windowsでも利用できるとユーザーは考える。だがWindows RT版のiTunesが出ることはないといってよいと思う」とマイネリ氏は厳しい見方を示す。
記事執筆に当たりMicrosoftにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
IDCの予想では、2013年のWindows RTタブレットの出荷台数は約360万台で、市場全体の1億9040万台に対してわずか1.9%である。一方、Androidタブレットは9320万台、iPadは8780万台になると見ている。
その後もWindowsタブレットは勢いがなく、2017年までに「Surface Pro」のシェアは7.4%、Windows RTタブレットは2.7%にとどまるとされている。この悲観的な予想は、これまでのWindowsタブレットの業績に基づくとマイネリ氏は説明する。
「Microsoftは、Windows 8に一本化すべきだろう。アプリケーションはコンパイルし直せばWindows RTでもWindows 8でも動くと主張することはできる。だが問題の一端は、複数のOSをサポートしようとしていることだ。そのため開発者の手が足りず、楽観的なコンシューマーやWindowsを応援したいコンシューマーですら、(最後に勝ち残ると思う)いずれかを自分で選ばなくてはならない」とマイネリ氏は指摘する。
だがMicrosoftは粘り強く、そう簡単には諦めない企業だ。市場でのシェア獲得のためなら、リリースから間もない時期に生じる大きな損はいとわない。オンライン関連の取り組みがその一例で、これまで莫大な資金をつぎ込んでいる。マイネリ氏は、MicrosoftがまだしばらくWindows RTに固執すると考えている。
「2013年にMicrosoftは何を仕掛けてくるのか。それによって、Windows RTが第2の『Xbox』になるか『Zune』になるかが決まるだろう。ただしZuneのリリース以降、世界は劇的に変化しているとMicrosoftは感じているようで、彼らは今までと違う戦略に立って動いていると私は見ている」(マイネリ氏)
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