2014年、企業でのモバイル活用の形はどう変わるのだろうか? 将来を見通すには、現状を正確に把握することが近道だ。各種統計から得た主要な数字を基に、モバイルの明日を占う。
私物端末にインストールされているアプリケーションの数を知ったら、読者は驚くかもしれない。しかし、2014年のタブレットとクライアントPCの予想出荷台数を知ったら、もっと驚くだろう。
コンシューマライゼーションがエンタープライズ市場を席巻する中、将来を占うさまざまな統計が飛び交っている。2013年11月に開催された「Consumerization of IT in the Enterprise Forum(CITE Forum)」の内容を基に、コンシューマライゼーション時代にIT担当者が直面している問題について、幾つか具体的な数字を紹介しよう。
米新聞「The Boston Globe」のコラムニストであるスコット・カースナー氏はオープニングで、エンタープライズ市場におけるコンシューマライゼーションを支配している、
という4つのトレンドを概説した。キルスネル氏によると、これらは全てユーザーの生産性向上に関係している。
「大切なのは、一日の最後に仕事が終わっているかどうかだ」と、米経済紙「The Wall Street Journal」を発行するDow Jones & Companyの最高情報責任者(CIO)、ステファン・オーバン氏は言う。
2014年のクライアントPCの予測出荷台数は、わずか4億台である。これは、クラウドベースのファイル共有サービスを提供する米Boxの上級副社長、ジョン・ハーシュタイン氏が引用したIDCのデータだ。一方、米Gartnerの予測はさらに厳しい。同社は、2013年の全世界のクライアントPC出荷台数が2012年から11.2%ダウンの3億300万台となり、2014年にはさらに少なくなると説明する。
クライアントPCがすぐに淘汰されるわけではないことには、ほぼ異論はないはずだ。ただし、タブレットを使って会社のデータへのアクセスを望む社員がますます増えるのは明らかである。つまりIT担当者は、ネットワークの準備をし、特定のセキュリティ対策が可能な私物端末の業務利用(BYOD)のポリシーを用意する必要がある。
問題は、アプリケーションの多くがまだモバイル端末に最適化されていないことだ。運輸・通信関連の小規模小売業者向けのソフトウェアを提供する米Neopost ID Americaは、モバイル端末向けにアプリケーションをリエンジニアリングする必要に迫られている。
同社のソフトウェア開発担当ディレクターであるラヴィ・ヴァンカヤラ氏は、「アプリケーションを設計した当初は、小型のフォームファクタを全く考慮していなかった」と語る。
ITプロフェッショナルでさえ、1990年代後期という、はるか昔にクラウドの概念が誕生していたと聞くと驚くかもしれない。登場からわずか6年ほどの米Appleの「iPhone」と比べると、クラウドの方が成熟したテクノロジーだ。
「クラウドはさまざまなモバイル機能を実現する」とハーシュタイン氏はコメントする。「クラウドとモバイルには、持ちつ持たれつの部分が多くある」
ハーシュタイン氏によると、SaaS(Software as a Service)には試用期間があり、ユーザーが購入前に試せることも大きなメリットだ。つまり、IT部門は毎年、サービスが会社の役に立っているかどうかを踏まえて契約を見直すことができる。
しかし、別の統計を見ると、こうしたメリットが霞むかもしれない。米Ponemon Instituteが実施した国際的な調査では、クラウドプロバイダーのデータ保護能力を「信頼している」と回答したのは約半数にとどまっている。また35%は、クラウドを利用することでセキュリティが弱まったと回答している。
米LogMeInの製品マーケティング担当シニアディレクターのエリック・ビスチェリア氏は、中堅・中小企業を対象にした調査結果を引用し、「BYODは忘れていい。今やBYOA(私物アプリケーションの業務利用)の世の中になった」と話す。実際、多くの私物アプリケーションが業務に利用されていると考えられる。
「これこそがコンシューマライゼーションの神髄だ。コンシューマライゼーションは、企業が提供したものとコンシューマーが受け入れたものが融合することだ」(同氏)
ハーシュタイン氏によると、アプリケーションストアで提供されているエンタープライズ向けアプリケーションの数は、この1年で2倍になった。BYOAに採用されるアプリケーションは、特定のタスクに特化して開発されていることがポイントだ。だが継続して使われるには、「感情に訴え、愛着を生むアプリケーションでなければならない」というのが、ビスチェリア氏の意見だ。
ビスチェリア氏が引用した、社員が職場に導入したアプリケーションに関する調査によると、コンシューマーが会社に持ち込んだアプリケーションの3分の2以上は、その後にIT部門が採用し、会社の標準になっているという。ユーザーが導入し、IT部門がその有用性を認めている形だ。
Neopostのヴァンカヤラ氏は、「全てはユーザーを基準にする必要がある」と説く。「需要はユーザーから生まれたものでなければならない」
もちろん、セキュリティやネットワークトラフィックの問題があるので、「IT部門は、コンシューマーが業務に使いたがるアプリケーションを全て受け入れるわけにはいかない」(ビスチェリア氏)ことも忘れるべきではない。
会社がそもそもBYODのポリシーを用意していない場合もある。だが「問題は、会社がポリシーを用意していてもユーザーが気付いていないケースだ」と、法律事務所の米Pillsbury Winthrop Shaw Pittmanのパートナー、ジョシュア・コンビサー氏は指摘する。
同氏は「強制力のないポリシーを用意するぐらいなら、ない方がましだ」と言い切る。
法的に堅実なBYODポリシーは、強制力があり、いつどこで会社のデータにアクセスできるかを明示し、分かりやすい言葉で具体例を示して決まりを規定しているものだとコンビサー氏は言う。最も重要なのは、IT部門が監視または管理している内容を社員に知らせることだ。
それでも、BYODにからんだ法的な問題は、個人のデータと業務データが同じ端末にあるとなれば、複雑になり得る。
例えば、ある特定の業界のユーザーが2週間休暇を取る際、休暇中に仕事に使っている私物端末をユーザーに使わせないようにするにはどうすればよいか? また、時給契約のユーザーについては、業務時間外に私物端末を使った場合に超勤手当が必要になることを考慮した監視も必要だ。
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