LinuxとWindowsを比較、サーバOSとして優れているのはどっち?主要な要件で徹底比較

データセンターで使用する最適なコモディティサーバOSを決めるとき、米Microsoftの「Windows」や「Linux」など、さまざまな選択肢がある。自社に最適なOS選びのポイントを専門家に聞いた。

2015年02月03日 12時00分 公開

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Windows | OS | Linux | Hyper-V


 企業のデータセンターでは、米Microsoftの「Windows」と「Linux」ベースのサーバは隣り合わせの状態で実行される。変化するワークロードに最適なサーバOSはWindowsとLinuxのどちらだろうか。

 本稿では、最適なサーバOSを決める上で重要なポイントごとに「Windows Server」とLinuxを比較し、2つのサーバOSに関する一般的な誤解を解く。機能、ハードウェアの互換性、リソース要件、安定性とセキュリティ、クラウド対応、コストとサポートに関する2人の専門家(サンダー・バン・ビュット氏とブライアン・ポージー氏)の評価を参考にされたい。

Windowsは万能なOSなのか? OSの機能で比較

バン・ビュット氏 サーバOSに関する最も重要な特徴には、機能、セキュリティ、安定性に加えて、問題が発生したときのベンダーサポートがある。また、システムの処理内容についても考えなければならない。具体的には、クラウド対応のOSが必要なのか、アプリケーションに特殊なハードウェア要件があるかなどだ。企業の認証/承認プラットフォームとしてWindowsがすぐに姿を消すことはない。だが、アプリケーションがクラウドプラットフォームに移行するにつれて、サーバOSの選択肢として、Windows ServerよりもLinuxに軍配が上がるようになるだろう。

 Windowsは万能なOSとして定評があるが、Linuxはそうではない。通例的にLinuxサーバは単体のサービスを提供する目的でデータセンターに配置されている。一方、Windows Serverは管理しやすい一体型のOSとして使用されている。

 多目的OSとしてLinuxをデータセンターに配置してはならない理由はない。だが、歴史的にLinuxサーバはLinuxが得意なタスクを行うために導入され、そのようなタスクを的確に処理している。Linuxは、ベンダーによるサポート費用を含めなければ無料で使用できる。ぜひ、処理が必要な個別のタスクと同じ数の仮想OSインスタンスをインストールされたい。サービスを個別のOSに分離することで、多目的サーバで複数のサービスを同時に実行するよりもセキュリティが強化される。

ポージー氏 当初、Windows Serverは万能のOSと位置付けられていた。だが、Microsoftはサーバの占有面積の最小化や専用のサーバの役割の使用という概念を強調するようになって久しい。この専用のサーバの役割はライセンス料金の関係で最近まで少し厄介な問題になっていた。

 現在、Hyper-V仮想化機能を搭載した「Windows Server 2012 Datacenter Edition」と「Windows Server 2012 R2 Datacenter Edition」には、Windows Serverの仮想マシンを無制限に実行できるライセンスが付与されている。そのため、大量のWindows Serverの仮想マシンを配置する企業はライセンスについて考慮する必要がなくなった。

OSの安定性では互角

バン・ビュット氏 「Linuxは安定性に定評があるが、Windows Serverにはない」というのは実情に即した情報ではない。Windows Server 2003以降の最近のWindows Server OSの安定性は強化されている。

 WindowsとLinuxの動作を停止させるのは、問題のあるドライバーを使用しているハードウェアくらいだ。OSの安定性に関する時代遅れの考えに基づいてサーバOSを選ばないように注意されたい。OSの安定性という点ではWindowsとLinuxは互角だといえる。

ポージー氏 少なくともこの10年でWindows Serverは安定したOSへと進化した。その影の功労者は厳密なハードウェアテストと各種ハードウェアデバイスとの互換性を保証するロゴ認定プログラムだ。

OpenStack、クラウドへの対応

バン・ビュット氏 「OpenStack」は、米NASA主導で始まったプロジェクトで、クラウドサービスプロバイダーである米Rackspaceが管理しているLinuxサーバで動作するクラウドフレームワークだ。米Red Hatを含む、コンピュータ業界における数百社の主要企業がOpenStackをサポートしており、OpenStackが未来の実質的なクラウドインフラになることを期待している。Windows Server OSで動作する「Microsoft Azure」のように、多くのベンダーが独自のクラウドサービスを提供している。

ポージー氏 Microsoftは、Windows ServerをクラウドOSとして売り込んでいる。具体的には、Windows ServerとHyper-V環境で動作する「Microsoft Azure」だ。同社がSaaSとして提供している「Microsoft Office 365」の動作環境もWindows ServerとHyper-Vだ。どちらも数百万の利用者がいる。

 サードパーティーのクラウドサービスプロバイダーの多くは、顧客がクラウドにWindows Serverの仮想化インスタンスを作成できるようにしている。

データセンターの総所有コスト

バン・ビュット氏 Linuxが無料OSであることは紛れもない事実だ。ただし、データセンターでLinuxを運用するにはコストが掛かる。Linuxでは保証が提供されないため、企業がLinuxの無料ディストリビューションを使用してニーズを満たすことはできない。Linuxは無料で、Windowsは有料だという誤解を解きたい。

 ほとんどの企業は、コストを掛ける対価として、できる限り最高の信頼性をサーバに求める。Linux自体は無料でも、サポートにはコストが掛かる。最高のLinuxサーバOSが、有償のサポート契約を行っているRed Hatや独SUSEといったベンダーから生まれているのは、これが理由だ。

 価格構成から、LinuxはWindows Serverよりコストが低くなる。例えば、Linuxディストリビューションには1ユーザー当たりのライセンスというものは存在しない。そのため、WindowsからLinuxにサーバを移行することで大幅なコスト削減を実現できる。

ポージー氏 長い間、Windowsは高価なOSだといわれてきた。その原因はサーバOS自体の価格とサーバへのアクセスに必要なクライアントアクセスライセンス(CAL)だ。Windowsを使用する場合、その費用はLinuxより高額になることが多い。だが、Microsoftは幾つかの製品のライセンス要件を変更し、ユーザーが複数のデバイスに製品を導入できることを企業にアピールしている。

企業ITのセキュリティ

バン・ビュット氏 LinuxのようなオープンソースのOSは、その構成を確認することができる。これをセキュリティ上の欠点だと考える人もいる。だが、利害関係者がLinuxのさまざまな面に自由にアクセスできるので、簡単にバグを検出して修正することが可能になる。一方、Windows Serverのように商標で守られたOSの場合、Windows Serverを使用している企業はバグに気付いても修正することはできない。

 オープンソースという特性によりLinuxの内部動作は公開される。だが、セキュリティはLinuxカーネルの一部であり、「Security-Enhanced Linux」(SELinux)のような高度な強制アクセス制御システムはLinuxカーネルをベースに構築されている。SELinuxは米国家安全保障局とRed Hatが協力して考案したものだ。例えば、セキュリティ管理者は不必要なシステムコールを全てブロックできる。だが、Windows ServerにはSELinuxに匹敵する機能はない。

ポージー氏 新しい脆弱性は発見されるものなので、Microsoftは定期的にWindows Server OS用のセキュリティパッチをリリースしている。また、組み込みのWindows Serverセキュリティ制御機能の使い方に関するマニュアルなども豊富に用意されている。それから、最良のセキュリティを実現するネットワークアーキテクチャを確立するためのヒントも確認できる。

データセンターのハードウェアニーズで比べると

バン・ビュット氏 端的に言うと、Linuxのハードウェア要件はWindowsよりも低い。256MバイトのRAMと2Gバイトの容量のディスクがあれば悪くないレベルのサーバを動作させることができる。だが、企業のデータセンターで見られる典型的なワークロードは、それほど小さくない。

 大規模なデータベースシステムの場合、LinuxのオーバーヘッドはWindows Serverより小さくなる。さらにLinuxのカーネルは高度なチューニングが可能で、管理者はさらなる効率化を図ることができる。

ポージー氏 Windows Server 2012 R2のハードウェア要件は、サーバのワークロードによって異なる。512MバイトのRAMと1.4 GHz(64ビット)のCPUが搭載されているシステムであればWindows Serverを実行することができる。

サーバOSのベンダーサポート

バン・ビュット氏 企業はサーバを稼働するために、サーバを運用しているわけではない。企業がサーバを利用する理由は、ビジネスをサポートするアプリケーションが必要だからだ。WindowsはLinuxシステムよりベンダーサポートが手厚いというのが通説だが、この状況は急速に変化している。サーバからクラウドに移行するアプリケーションが増えている中、企業では主に大きなアプリを社内に残す傾向が見られる。最も顕著なのは、米Oracleや独SAPのアプリだ。WindowsとLinuxはどちらも、これらのアプリに対応している。

ポージー氏 Microsoftは主要なサーバハードウェアベンダーから幅広い支持を得ている。競合するOSを搭載したサーバを提供しているベンダーもあるかもしれないが、どのシステムもWindows Serverをサポートしている。

 特定のOSに対応するだけでは、サーバメーカーとして十分な対応とは言い難い。OSが真価を発揮するには、IT部門は追加したハードウェアをすぐに使えるようにするドライバーが必要だ。ほぼ全てハードウェアメーカーが各製品でWindows対応のドライバーを提供している。

企業内認証

バン・ビュット氏 今もなおWindows Serverが強い力を持っている分野の1つが企業内認証だ。「Active Directory」は、アプリケーション、ユーザー、コンピュータなどのリソースを統合する完全な認証/承認プラットフォームだ。Active Directoryに相当するものはLinuxにもあるが、デバイスとアプリに対する同様のサポートはない。

ポージー氏 Active Directoryは堅牢で信頼性が高くセキュリティも確保されている。また、多くのサードパーティー製品でサポートされているため、Active Directoryは認証に関する事実上の基準となっている。



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