“データマネタイゼーション”の可能性
情シス部によるデータの外販が広がる? 会社から圧力が強まる“収益化”
“データマネタイゼーション”は新たなゴールドラッシュを巻き起こすのだろうか。CEOと取締役会はそのように考えており、CIOに一獲千金の期待を寄せている。
IT部門の主な任務は、データに価値を見いだそうとするビジネス部門の支援だ。だが、最高情報責任者(CIO)は、果敢にも外部顧客に対し同様のサービスを提供することを求められることが増えている。具体的には、パッケージ化できて、場合によっては販売可能なサービスの提供だ。
米Center for Information Systems Researchで上級研究者を務めるバーバラ・ウィクソム氏をはじめとする専門家は、この傾向を「マネタイゼーション」と呼んでいる。ウィクソム氏は、マネタイゼーションを一種の法定通貨やそれに準ずるものをもたらす情報の交換と定義している。データの販売はもちろん、製品に関するデータの交換やデータのラッピングまでもが、データマネタイゼーションに含まれる。同氏によると、データから収益を生み出す重圧をCIOに対して掛けているのは企業の上層部だという。つまり、CEOと取締役会である。
データから価値を生み出すという目的は、顧客が社内外のどちらにいても同じかもしれない。だが、データマネタイゼーションは「社内向けの方法で生み出す価値とは異なる」とウィクソム氏は2015年5月下旬に開催された「The MIT Sloan CIO Symposium」で述べた。CIOがデータマネタイゼーションの駆け引きに乗り出してもビジネスの課題は解決しない。CIOが追求すべきは市場シェアだ。市場シェアを追求することで、新たな課題が持ち込まれる可能性がある。
新しい分析をサービス提供として拡大
医療機器販売会社の米Owens&Minor(OM)で以前、テクノロジーソリューション部門の統括責任者を務めていたドン・ストラー氏は、上述のような課題の1つにスケーラビリティを挙げている。「データを求めて自社のデータベースにアクセスする何千人ものユーザーに対応することになる。このモデルを市場で展開する場合は、スケーラビリティに目を向けなければならない」とMIT Sloan CIO Symposiumのパネルディスカッションでストラー氏は語った。
ストラー氏は1990年代後半にOMの「支出分析」サービスの立ち上げを支援した。これは、支出データを収集し、整理し、分析することが支出分析と呼ばれるようになる前のことで、クラウドコンピューティングが誕生する前の時代のことだ。
インターネット経由で提供された同社の支出分析サービスは非常にユニークで、すぐに競争力の高い差別化要素になった。そして、OMによる市場シェアの獲得を後押しし、予期せぬビジネスチャンスの下地を作った。当初この支出分析サービスはOMのサプライチェーンに目を向けた。サプライチェーンのデータによって明らかになったのは、OMの平均的顧客の総支出における約30%だ。だが、データの分析によって可能なことを顧客が認識すると、約30%が可視化されただけでは不十分だった。「OMの顧客は、OMにデータを提供し、OMが分析ソリューションを作り出すことを望んだ」とストラー氏は振り返る。このようにしてデータマネタイゼーションによる新しいビジネスが誕生した。
ストラー氏によれば、データマネタイゼーション事業を始動する際、CIOは顧客からの要求拡大を見込んで、計画を立てるべきだという。同氏は現在、支出分析企業の米Healthcare IQで事業/販売サポート部門の担当部長を務めている。「このような取り組みを始めると、顧客はさらに多くのことを求めるようになる。もっと変更を、もっと機能をといった具合にだ。こうした取り組みでは最初に立ち位置を定める必要がある。企業的な観点から取り組む場合もあれば、ITの観点から取り組む場合もあるだろう。最終的には他の企業も参入し、そうした競合企業に追われるようになるからだ」(ストラー氏)
競合企業の展望
金融サービス持株会社の米State Streetでは、データマネタイゼーションサービスが部門として独立した。また、2013年には、データと分析を扱うGlobal Exchange部門を立ち上げた。それ以前は、同社が顧客に提供する分析(流動性分析やリスク分析など)は基本的に無料のサービスだった。
「分析はバンドルされていた。その価値もあまり示されておらず、理解もされていなかった」とState StreetのGlobal Exchange部門で最高革新責任者と顧問/情報ソリューションの責任者を務めるジェシカ・ドノヒュー氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 実画面を見れば納得 営業・設計・開発を「AI×CRM」でつなぐとこうなる -
比較資料
[アイティメディア広告企画] ERP導入ガイド:「OBIC7」「SMILE V 2nd Edition」「Oracle NetSuite」を比較 -
市場調査・トレンド
[アイティメディア株式会社] AI Overviews時代のB2Bマーケ! 成長企業が選ぶ戦略とは? -
市場調査・トレンド
[アイティメディア株式会社] なぜあの施策は失敗したのか? B2Bマーケ施策を成功させる3つの鉄則 -
市場調査・トレンド
[株式会社Zendesk] 調査で判明:AIを活用したCX変革、成功に向けて押さえておきたい5つのトレンド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
MS&ADグループの目指す「AX」の全貌 本山CDOが語る変革の本質
-
4
「GitLab」に最高深刻度の脆弱性 2014年以降の全版に影響を及ぼす恐れ
-
5
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
6
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
7
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
-
8
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
9
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
10
金融・通信で情報漏えいが続出 IPAとJPCERT/CCが情シスに求める緊急点検
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
3
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
4
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
5
顧客対応自動化の要点:RAGとデータ連携で“業務で使える生成AI”にする方法
-
6
マンガで解説:情シスの負担を減らす「MDRサービスのインシデント対応」の中身
-
7
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
8
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
9
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
10
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー