クラウド移行の際には脱出手段も考えておこう
「Windows」の歴史を繰り返すクラウドベンダー Microsoft、IBM、Amazonの協業の未来は?
IBMからAmazonに至るまで、多くの大手テクノロジー企業は、クラウド関連のパートナーシップを結んでいる。だが、このようなパートナーシップは果たしてどのくらい続くのだろうか。
テクノロジーに関する多くの物事と同じように、クラウドベンダーの情勢も常に進化している。多くの場合、長きにわたって競合関係にあった企業が、互いの違いを無視して提携している。このトレンドは、特にクラウド市場で一般的になっている。
米Microsoftと米Oracleを例に見てみよう。MicrosoftとOracleは数十年にわたって最大のライバルという関係にあった。だが、クラウドについては、仲たがいしないことを学んだようだ。Microsoftユーザーは、「Windows Server Hyper-V」または「Microsoft Azure」でOracleの「Java」「Oracle Database」「Oracle WebLogic Server」「Oracle Linux」を実行することができる。そして、全てのソフトウェアの認定とサポートはOracleが行う。だが、なぜ急にこのような心変わりをしたのだろうか。
クラウドに関するパートナーシップは珍しいものではなくなっている。だが、ベンダーは常に自己の利害を考えていることを忘れてはならない。米Amazon Web Services(Amazon)、Microsoft、米Googleなどのトップクラウドサービスベンダーは、このようなパートナーシップを利用して、自社のパブリッククラウドサービスの用途を広げている。一方、多くのソフトウェアベンダーは、自社のアプリケーションを人気のあるクラウドプラットフォームで使用できるようにするためにクラウドパートナーシップを結んでいる。
「製品ラインを終了したり、流通のギャップを埋めるために他社とパートナーシップを結ぶことで、ベンダーはユーザー基盤と権力の及ぶ範囲を広げようとしている」と米Enderle Groupの社長で主席アナリストを務めるロブ・エンデルレ氏はいう。
コミットメントへの恐れ
ベンダー間で結ばれるクラウド関連のパートナーシップは共生を目的としたものだ。Amazonと米IBMのパートナーシップは、その一例である。このパートナーシップによって、AWSユーザーは「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)インスタンスで「IBM DB2」「IBM Domino」「IBM Informix」「IBM Web Content Manager」などのIBM製品を実行することができる。Amazonの目的は自社のシステムを大企業にとって魅力的なものにすることであり、大企業はIBMが得意とする分野だ。一方、IBMは自社のツールを各種クラウドプラットフォームで運用できるようにしたいと考えており、Amazonはクラウド市場のリーダーである。その結果、どちらのベンダーも、このパートナーシップで恩恵を受けている。
ただし、全ての関係に付随する大きな問題が1つある。それはコミットメントだ。クラウドプロバイダーは、自社のテクノロジー間に密接な関係を構築する計画を立てている。この関係が成功するかどうかは、顧客の関心と導入に懸かっている。そのため、このような関係がいつまで続くかは予測不能である。
「全てはベンダー次第だ。最大の価値は発表することにあり、発表以降の価値はあまりない」(エンデルレ氏)
思い返せば、PCが誕生したとき、MicrosoftとIBMはパートナーシップを結んでいた。やがてIBMは独自OSの開発を試行するようになり、最終的には「Windows」と決別した。歴史は繰り返されるものである。そのため、クラウドに関する多くのプロバイダーのパートナーシップで、同じことが起こっても不思議はない。
「今パートナーシップを結んでいるからといって、未来永劫パートナーであるわけではない」と米Directions on Microsoftのリサーチ部門のディレクターを務めるウェス・ミラー氏は語る。
クラウドのパートナーシップがIT部門のプラスに働くとは限らない
クラウドベンダーのパートナーシップでは、ユーザーの望みよりも、競争上の要因が優先される。例えば、Amazon、Google、Microsoftは距離を置いた関係を維持している。そして、自社のサービスと連係するクラウドのエコシステムを構築している。
詰まるところ、ベンダーは、多くのクラウドユーザーが本当に望んでいるものを提供するために、自社のビジネスを犠牲にするつもりはない。ユーザーが本当に望んでいるのは、トップベンダーシステムとの互換性だ。
共通のインタフェースがあれば、「Amazon Web Services」(AWS)で実行中のアプリケーションをAWSエコシステム内の別のクラウドプラットフォームに簡単に接続できる。ただし、AWSで実行しているサービスをMicrosoft Azureに移行する作業は困難になる。標準のインタフェースを搭載したオープンソースのクラウドプラットフォームを選べば、いくらか安心感を得られるだろう。例えば「OpenStack」だ。だが、トップベンダーのクラウドプラットフォーム間でアプリケーションを移行する作業は、依然として手間が掛かる。
では、ユーザーは自分を保護するために、どのような手段を講じたらよいのだろうか。端的にいうと、買った後では手遅れだということを肝に銘じるべきである。
「通常、顧客はクラウドに関する契約の初期段階を見ている。つまり、アプリケーションをクラウドに移行する上で今やるべきことにのみ注力している。だが、それよりも重要なのは、そのクラウドから抜け出すために何を行う必要があるかだ」とミラー氏は警告する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
6
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
7
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
8
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
9
「高すぎるGPU」を捨てAI推論をCPUへ Armが示す電力とコストの現実解
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー