日本のおもてなし文化の1つであるおしぼりを中核事業に据える藤波タオルサービスは、ITを活用して社内に情報共有文化を根付かせた。適したツール選びやツールの活用を浸透させるまでにはさまざまな工夫があった。
日本のおもてなし文化の1つともいえるおしぼり。飲食店で着席して最初に差し出されるおしぼりは、店の第一印象を左右しかねない重要な役割を担っている。その一方で、より良い物をより安く求められるレンタルおしぼり業界は、激しい競争に置かれている。そんな業界で50年近く事業を続け、近年は海外展開も進めるなどの躍進をしているのが藤波タオルサービスだ。同社の躍進の背景には、業務のIT化が少なからず貢献している。
藤波タオルサービスは、おしぼりのレンタルや販売を中核事業とし、近年ではサイエンス分野や医療分野にもその事業エリアを広げつつある。従業員は約170人と多くないものの、ベトナムや香港、マレーシアなど海外展開にも積極的な姿勢を見せる。2016年春に開催された主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、IMC(国際メディアセンター)に、一般的な手を拭くタイプから体を拭けるような大きなタイプまで数種のおしぼりを提供し、日本のおもてなし文化の伝達にも貢献した。
2017年に創立50周年を迎えようとする同社に大きな転機をもたらしたのは、藤波克之氏の社長就任だ。それまでNTTのグループ企業で電話や通信の先端を見てきた藤波氏は、ビジネスの拡大にIT活用が不可欠なことを知っていた。
「社長に就任した当時、藤波タオルサービス社内にはPCが数台あるだけで、見積もりや受注伝票も手書きでした。ITを使ってこれらを効率化していくこと。私がまずできるのはそこからだと思いました」(藤波氏)
藤波氏は新商品の開発や海外への販路拡大などを進める傍ら、グループウェアやセールスフォース・ドットコムのクラウド型SFA(営業支援システム)「Sales Cloud」などの導入を進めていった。ITパートナー企業から藤波タオルサービスにジョインした情報システム室 室長の瀬尾竹蔵氏が、2009年からは藤波氏の片腕となり共にIT化を推進した。
しかし社内のIT化は一筋縄ではいかなかったという。藤波氏は前職でグループウェアやSFAを使った経験があったが、社員の多くは業務でPCを使うこと自体に慣れていなかったのだ。「社員それぞれが持っている情報を気軽に共有できるようにして、社内の風通しを良くしたかったのですが、思っていたほど簡単ではありませんでした」(瀬尾氏)
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