本稿では、データストレージテクノロジーのトレンドの中から、2017年に盛り上がりそうなものを取り上げる。後編ではNVMe、SDS、超高速ファイバーチャネルがテーマだ。
この記事では2017年のストレージ業界に非常に大きな影響を及ぼすデータストレージテクノロジーのトレンドを紹介し、その概要と技術進化において何が革新的なのか、そのポイントを解説している。
前編の「コンテナ“一強”時代に変化に兆し、 SSDは高密度競争へ」では、クラウド間バックアップ、コンテナ、大容量SSDについて取り上げ、市場需要の変化と技術の進化の相乗効果で2017年に大きく躍進するだろうと予想する理由を示した。後編でも2017年で注目すべきトレンドを紹介する。
なお、現在開発中で業界関係者が大きな期待を寄せているような試作テクノロジーや、構想段階でまだ実現するための製造技術のめどが立っていないのに、そのメリットについて技術者が訴求している非現実なテクノロジーは取り上げていない。
あくまでも実用性が証明されている新しいストレージテクノロジーに限定して取り上げる。そのため、ここで示すストレージテクノロジーのトレンド一覧は、ストレージ業界が提供する最高かつ最強のテクノロジーかつ現在購入および導入できるものだけを取り上げている。
SSDは、今のところ「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)に対応するストレージの最大市場になっている。とはいえ、レイテンシを低減し、パフォーマンスを向上させるNVMeテクノロジーは、企業ストレージシステムでも話題になり始めているストレージテクノロジートレンドの1つだ。
NVMeテクノロジーを利用するサーバモデル、ハイブリッドストレージアレイ、オールフラッシュアレイの2017年における出荷数は倍増では収まらないだろう。価格が手頃になり、NVMeを取り扱う流通網の拡大がその要因だ。IDCでリサーチ部門の統括責任者を務めるジェフ・ヤヌコビッツ氏は「NVMeの採用はまだ始まったばかりだが、転換点を迎えている。市場が広がり、利用できるモデルも増えている」と語る。
NVMeはSCSIの代わりになる。SCSIは、ホストとストレージ機器の間でデータを転送するための規格で昔から使用されている。SCSIが標準規格となった1986年におけるデータセンターの主要ストレージはHDDとテープだった。業界がNVMeを設計したのは、PCI ExpressのSSDなど、高速ストレージテクノロジーをサポートするためだ。2011年に公開されたNVMe仕様は、効率の高いレジスタインタフェースとコマンドセットを規定する。これによりI/OスタックのCPUオーバーヘッドが削減できる。
IDCでリサーチ部門のディレクターを務めるエリック・バーガナー氏は、NVMeが実現するパフォーマンスを必要とするアプリケーションワークロードの1つとして、ビッグデータのリアルタイム分析を挙げる。このような高いパフォーマンスが求められるワークロードをターゲットに、NVMeベースのストレージ製品を用意しているベンダーもある。Dell EMC、E8 Storage、Mangstorなどがその例だ。
NVMeを採用するストレージシステムは「ラックスケールフラッシュ」とも呼ばれる。このようなストレージシステムは、規模は比較的小さいながら、今後数年にわたって市場が拡大していくだろう」と予測するバーガナー氏は次のようにも語る。「市販のNVMeデバイスで、ホットプラグやデュアルポートなどの企業向けの機能がサポートされれば、アレイ市場の成長はもっと加速することになる」
また、「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)規格も策定作業が間もなく登場する。この規格はPCI Expressに代わるもので、NVMeホストとNVMeストレージデバイスの接続距離が長くできる。100社を超えるベンダーが参加する非営利団体NVM Expressが、2016年6月に策定したのがNVMe-oF仕様だ。
長期的に見た場合、NVMeの成長性はかなり期待できる。市場調査を手掛けるG2Mは、2020年までにNVMe市場は570億ドルに、年平均成長率は95%に達すると予測している。
G2Mは、2020年までにエンタープライズストレージアプライアンスの60%、エンタープライズサーバの50%超にNVMeベイが搭載されるとも予測している他、同年までに、オールフラッシュアレイの40%近くがNVMeベースになり、NVMeベースSSDの出荷台数は2500万に増加すると見積もっている。
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