「Slack」の存在が影響か
Microsoftが「Teams」へのメール機能の実装に二の足を踏む理由
「Microsoft Teams」にメール機能を追加してほしいという声が集まっている。この案は2018年から「検討中」のままだ。技術的な課題は多くないにもかかわらず、Microsoftがメール機能を実装しない理由は。
Microsoftが提供するビジネスチャットツール「Microsoft Teams」に対して、メールへのアクセス機能の追加を求めるエンドユーザーの数は6000人を超える。しかしMicrosoftはこの案を2018年から2年にわたって棚上げにしている。
Teamsからメールを送受信できないことが、ユーザー企業内のTeams利用拡大の妨げになっている場合もある。保険会社Everest Reinsuranceでデジタルワークプレイス部門長を務めるダン・マリガン氏は「Teamsを使ってメールの送受信ができれば理想的だ」と語る。
メール機能があればアプリケーション間を行き来する必要がなくなり、1つのインタフェースで全ての作業ができるようになるため「社内でのTeams利用ももっと広がるだろう」とマリガン氏は話す。Microsoft製のメールアプリケーション「Microsoft Outlook」のエンドユーザーにとって、TeamsへのOutlookタブの実装は、Teamsの利便性を高める手段になるとマリガン氏は言う。
TeamsにOutlookタブを追加してほしいというエンドユーザーからの要望は、2016年からあった。Teamsユーザー向けにMicrosoftが用意するフィードバック用Webサイトでは、この案に6000票の賛同が集まっており、特に要望の多い機能の一つになっている。
しかしMicrosoftの担当者は2020年2月、同Webサイトへの投稿で、この案がまだ検討段階であることを示した。
専門家によると、エンドユーザーから要望の多い他の機能と比べ、TeamsへのOutlookタブの追加は比較的簡単にできるはずだという。Microsoftが作成したチュートリアルも、同社がエンドユーザーに提供する開発キットを使って、Outlookタブを自作する手順を示している。
コンサルティング企業Modality Systemsで主席ソリューションアーキテクトを務めるトム・アーバスノット氏は「メール機能の実装は技術的に難しいわけではないのだから、Microsoftの判断によるものだろう」と推測する。
「Teams」にメール機能は本当に必要か
一部の専門家は、MicrosoftがOutlookタブを追加したがらないのは、Teamsのマーケティング方針と矛盾するからではないかと考えている。MicrosoftはTeamsを、メールとは別の用途に位置付けようと努めてきた。
MicrosoftがTeamsを開発した目的の一つは、Slack Technologiesの「Slack」に対抗することだ。Slackを使うことで、メールを使わずに共同作業ができる。TeamsにOutlookタブを追加してしまうと、メールを使いたくない企業内のエンドユーザーへの訴求力が、Slackよりも落ちる可能性がある。「マーケティングの観点から言えば、Teamsにメール機能を追加することはコミュニケーションツールの流れに逆行し、奇妙なメッセージになってしまう」とアーバスノット氏は指摘する。
この件の結論が先延ばしになっている背景にはMicrosoft社内の戦いが関係している可能性もある。Microsoftのオフィススイート「Office 365」に占める役割を巡り、TeamsとOutlookの個々の製品部門間で攻防があるのではないかという。TeamsにOutlook機能を追加すれば、企業におけるスタンドアロンアプリケーションとしてのOutlookの役割が低下することになるだろう。
MicrosoftはTeamsにOutlookタブを追加するよりも、TeamsとOutlookの連携を強化することに焦点を置いている。Teamsの「チャネル」機能で作成したチャットグループにメールを送信したり、TeamsのメッセージをOutlookにエクスポートしたりすることが可能になった。Slackにも、OutlookやGoogleのメールサービス「Gmail」と連携する同様の機能がある。
Teamsにメール機能を追加する案に全てのエンドユーザーが賛同しているわけではない。MicrosoftのユーザーフィードバックWebサイトに寄せられた400件以上のコメントの中には、この案に反対する声も多数ある。彼らは、Microsoftがコミュニケーションの方法に応じてアプリケーションを分離していることを高く評価している。
Gartnerのアナリストであるアダム・プリセット氏は、Microsoftはどの方針を採るにせよOutlookとTeamsの連携を強化する必要に迫られるという。メールは社外の相手とのコミュニケーションに最適な手段として残るからだ。
TeamsはOutlookの簡易版のみを含めるのが賢明だ。そうすればOutlookの大量の機能でTeamsが複雑になるのを防ぐことができる。またはOutlookタブを有効にするかどうかをエンドユーザーが選択できるようにするのも良い。
Microsoftは企業内のエンドユーザーに「Teamsは全てのOffice 365アプリケーションのハブになる」と言い続けてきた。「現段階で足りないのはメールとの連携機能の充実だ」とプリセット氏は語る。
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