新型コロナウイルス感染症の防止策として英国でロックダウンが実施されたとき、銀行は支店の休業を余儀なくされた。調査データによれば、この経験がインターネットバンキングの普及につながった可能性がある。
SAS Instituteが2021年11月に公開した調査データによると、英国の銀行利用者の4人に1人は、もう銀行の実店舗に足を運ぶつもりがなく、全てをインターネットバンキングで済ませたいと答えたという。英国の銀行利用者はインターネットバンキングのサービスに満足しており、パーソナライズされたサービスを受けるために個人情報を共有しても構わないと考えていることも明らかになった。
この調査は、SAS Instituteの依頼で調査会社3Gemが英国の成人1000人を対象に実施したものだ。現在インターネットバンキングを利用している回答者の4分の1以上(26.5%)が、もう銀行の実店舗には足を運ばず、今後も永続的にデジタルサービスを利用するつもりだと答えた。実店舗とデジタルサービスの両方を利用すると答えた回答者は18.7%だった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、インターネットバンキングの普及を加速させるきっかけとなった。この期間に、英国の主要な銀行は支店を休業し、顧客は実店舗以外の方法を利用せざるを得なくなった。インターネットバンキングのユーザーのうち、12.7%がパンデミック中に初めてデジタルサービスを利用したという。
銀行はパンデミックに対処するため、IT投資を強化してデジタルサービスを拡充するとともに、支店を閉鎖してコストを削減した。支店の閉鎖は数年前からコスト削減の目的で進んでいたが、パンデミック中に顧客がインターネットバンキングに移行したことは、支店閉鎖をさらに進める大義名分となっている。欧州では、2021年だけで何千店もの支店が閉鎖になっている。
同調査によれば、支店が閉鎖になって利用できなくなっても、カスタマーサービスレベルはそれほど影響を受けていなかった。パンデミック中にカスタマーエクスペリエンス(CX:顧客経験価値)が低下したと感じた回答者は15%で、カスタマーサービスが速く効率的になったと答えた回答者は14.5%だった。
SAS Instituteはこの結果を「ITへの投資の成果だ」と分析。「英国でインターネットバンキングは成熟産業と言える可能性がある。銀行はこのパンデミック以降、カスタマーサービスを大幅に向上させた」と述べている。回答者は、サービスレベルが向上した理由の一つに「ターゲットを絞った小まめなサービス」を挙げており、20.7%の回答者は「オンラインおよび店舗サービスが以前より素早く簡単に受けられるようになった」と回答した。
英国の銀行は今後もレベルの高いデジタルサービスを提供していかなければ、顧客を失うリスクがある。同調査では英国の顧客の50%以上が、全ての業界において「1、2回でも悪い体験をしたら利用先を変える」と答えたという。
インターネットバンキングにおける大きな変化は、「個人情報を共有しても構わない」という考えが顧客に広がりつつあることだ。インターネットバンキングになじんだ顧客は、個人情報を銀行と共有するメリットを理解し始めている。
同調査によると「取引が素早く簡単になり、高度な分析によって有用なアップデートが受けられるなどのCX向上につながるなら、個人情報を共有しても構わない」と答えた回答者は11.8%だった。12.1%の回答者が「割り引きやパーソナライズされた特典などを受けられるならデータを共有しても構わない」と答えた。
デジタルのやりとりで得られるデータに基づく分析情報は、パーソナライズされた有意義なCXを提供するために必要な情報だ。顧客もこの意義に気付き始めており、「シームレスなデジタル体験というメリットを得るために、個人情報を共有することをいとわなくなってきている」と、SAS Instituteの英国法人で銀行部門責任者を務めるジョニー・スティール氏は述べる。
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