仮想空間での痴漢やストーカーといった迷惑行為は、企業が仮想空間で会議やイベントを実施する際の妨げになる。仮想空間におけるハラスメントの実情と、ベンダーが打ち出している対策を紹介する。
「メタバース」(巨大仮想空間)などの仮想空間において、アバター(仮想キャラクター)を使った他のエンドユーザーへのハラスメント(嫌がらせ)が発生している。仮想空間で会議をするための製品を企業に提供するベンダーは、そうした製品の安全強化を迫られている。
VR(仮想現実)関連製品の販売で大きな収益を上げたいベンダーにとっても、仮想空間における共同作業でテレワーカーの生産性を高めたい企業にとっても、仮想空間にかける期待は大きい。だがハラスメントを阻止できない限り、企業が仮想空間の活用に踏み出すことは難しい。
調査会社The Extended Mindが2018年に発表した調査結果では、女性回答者162人の49%が、仮想空間で他のエンドユーザーと交流しているときに体を触られる、付きまとわれる、やじを投げ掛けられるなどのハラスメントを経験したと回答した。男性回答者422人の20%が、暴力的な脅しを受けたと回答した。
仮想空間はエンドユーザーに臨場感を与える仕組みを有する。そのため仮想空間内でハラスメントを受けたエンドユーザーは、ビデオ通話や音声通話よりも重い被害を受ける可能性がある。
他のアバターから仮想空間内のパーソナルスペースに踏み込まれたエンドユーザーは、現実世界でそうされたときと同じように不快になる。「仮想空間で誰かが自分の仮想的な体に触れることについて、人々は『非常にトラウマ(心的外傷)的な経験だ』と語る」と、バーチャル会議を研究するミシガン州立大学(Michigan State University)教授、ラビンドラ・ラタン氏は言う。
こうした状況を受けて、仮想空間を提供するベンダーはハラスメント対策に着手している。2022年2月、MicrosoftとMeta Platformsは、それぞれのVR製品に痴漢行為防止策として、デフォルトのパーソナルスペースを導入すると発表した。Microsoftは「AltspaceVR」で、Metaは「Horizon Worlds」で、アバター同士が過度に接近できないようにする。
仮想空間でのハラスメントを防ぐには、メール認証など入場者を制御する手段が必要だ。仮想空間ベンダーeXp World Technologies(Virbelaの名称で事業展開)は同社が提供するバーチャルオフィスについて、見込み客向けの見学用パブリックスペースを用意している。既存ユーザーを悪質ユーザーから保護するためだ。
企業が仮想空間のハラスメント対策機能を活用するには、従業員に対して事前にハラスメント対策教育を実施しておく必要がある。その理由についてVirbelaの共同創始者アレックス・ハウランド氏は、「ツールの存在や使い方を知らなければ、従業員がハラスメントに対抗するのは困難だからだ」と語る。
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