ロシアのウクライナ侵攻が続く中、業務を継続しているウクライナのIT企業は、どのような事業継続計画を用意していたのか。SoftjournとDataArt Solutionsの事例を紹介する。
中編「ウクライナのIT人材流出が『安価な労働力』の前提を崩壊させる」に続き、後編となる本稿は、ウクライナのIT企業が立案、実行する「事業継続計画」や、業務への備えを紹介する。
ロシアのウクライナ侵攻が続く中でも、ウクライナ国内ではさまざまな企業が相当量の業務を続けてきた。「ウクライナ西部の安全な地域へ移動した従業員もいるが、キーウ(キエフ)地域や南部のオデーサ(オデッサ)で働いている従業員もいる」。ソフトウェア開発・コンサルティング企業Softjournのマネージングディレクター、セルギー・フィトサック氏はそう話す。同社は米国、ポーランド、ウクライナに拠点を持ち、ウクライナには研究開発センターがある。
こうしたSoftjournのレジリエンシー(回復力)は、2014年に策定してから現在まで発展し続けている「緊急時対応計画」に起因する。この計画には、従業員のノートPCを除く全てのITインフラをクラウドサービスに移行することも含まれている。同社はインターネットサービスをインターネットサービスプロバイダー(ISP)各社から調達し、衛星インターネットサービスも使っている。オフィスにはバックアップ用の発電機を設置し、2021年末には従業員のノートPCをチェックして、電源がなくても数時間稼働することを確認していた。
ソフトウェア開発企業DataArt SolutionsのITインフラも、従業員のノートPCを除き、ウクライナ国内に保有しているIT資産は何もないという。同社は米国、英国、アルゼンチン、北欧の他、ウクライナを含む東欧諸国で事業を展開している。同社の共同創業者兼マネージングディレクター、アレクセイ・ミラー氏によると、ウクライナ国内の従業員はクラウドサービスと、ポーランドやラトビアで仮想化技術を使って運用する開発環境のインフラを組み合わせて使っている。
DataArt Solutionsの顧客は、これまでのところ、同社の新しい働き方を受け入れている。「今のところ、顧客は圧倒的に応援してくれている」とミラー氏は話す。自宅に避難民を受け入れると申し出た顧客や、たとえ仕事ができなくてもDataArt Solutionsの開発者のために報酬を支払う意向の顧客もいる。
Softjournは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった後に、複数の新規顧客と契約を結んだ。「われわれは仕事を続け、同じ品質のサービスを提供できている」とフィトサック氏は語る。
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