半導体ベンダーは5Gや機械学習の活用、セキュリティ強化など新たな取り組みが進む中、「スマートNIC」を強化する。プログラム可能な集積回路「FPGA」の活用がその一例だ。FPGAで何ができるのか。
ネットワークインタフェースカード(NIC)にプロセッサを搭載する「スマートNIC」。その役割として注目すべき点は、過負荷になりがちなCPUの負担を分散させることにある。複数の半導体ベンダーがスマートNICに分類される製品を提供している。その一社であるAchronix Semiconductorは、集積回路の一種「FPGA」(Field Programmable Gate Array)のスマートNICを提供する。
FPGAは「プログラムの書き換え可能な集積回路」を意味する。Achronix Semiconductorが提供するのは、
といったFPGAだ。同社のFPGAには、単独で使えるスタンドアロン型の他、「ASIC」(Application-specific integrated circuit)や「SoC」(システムオンチップ)と組み合わせるタイプがある。ASICとは特定用途向けに設計した半導体製品、SoCとはシステムを動かすために必要な機能を1つのチップ(集積回路)に搭載する半導体製品を指す。同社はSpeedster7t FPGAを組み込んだアクセラレーター(NICを指す)として「VectorPath S7t-VG6」を提供している。
Speedster7t FPGAの中核は、帯域幅20Tbps超の「NoC」(ネットワークオンチップ:チップが搭載するネットワーク)だ。このNoCは各種I/O(入出力)やメモリとの接続を含め、さまざまな役割を担う。
AchronixのスマートNICは、通信や自動車、機械学習などのAI(人工知能)技術、ストレージ、ネットワーク、軍事・防衛といった幅広い分野で力を発揮する。「5G」(第5世代移動通信システム)をはじめたとしたネットワークの高速化、通信データの高速処理や管理、セキュリティ強化などにも活用できる。例えば5Gのネットワーク構成を検討する際は、用途に応じて異なった設計が必要になるため、プログラム可能なスマートNICの特性が生きる。
高負荷の汎用(はんよう)用途にCPUではなくGPUを活用するのと同じように、FPGA搭載のスマートNICを機械学習の計算の高速化に使う用途も考えられる。ハードウェアのOEM(相手先ブランド製造)ベンダーは、ストレージのデータプレーン(データ転送を担う機能)をカスタマイズしてユーザー企業に提供することも可能だ。その場合は機械学習向けの設計の他、データの暗号化や圧縮、重複排除などがカスタマイズの候補になる。
第3回は、Achronixと同様にFPGAを提供する半導体ベンダーの製品を紹介する。
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