「クラウドにロックインはない」は誤解だった? クラウドファーストの落とし穴「クラウドファースト」戦略の手法とリスク【中編】

「クラウドファースト」を採用する場合、クラウドサービスのメリットだけではなくリスクにも留意する必要がある。クラウドサービスが抱える主なリスクと、その解決策を説明する。

2023年05月29日 08時15分 公開
[Tom NolleTechTarget]

 「クラウドファースト」は、システムのインフラとしてクラウドサービスを優先的に採用するIT戦略だ。クラウドサービスの利用を前提としてシステムを構築することで、ユーザー企業はクラウドサービスのメリットを享受しやすくなる。

 常にクラウドファーストが適切なわけではない。既存システムにしても、新規システムにしても、インフラとしてクラウドサービスを利用する場合には、さまざまなリスクがあるからだ。どのようなリスクなのか。クラウドファーストを採用する前に把握すべき、クラウドサービスの主要なリスク3つを整理する。

1.クラウドにも実はあった「ベンダーロックイン」

 クラウドベンダーは、サーバやストレージといった汎用(はんよう)的な用途のクラウドサービスだけを提供しているわけではない。例えばクラウドベンダーは、自社が提供するクラウドサービスを生かしたシステムを開発しやすくするために、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を提供している。

 開発者はクラウドベンダーが提供するAPIを使用することで、システムを迅速に開発できるようになる。一方でこうしたAPIを使用して開発したシステムは、他のクラウドサービスやインフラに移植する場合に、大幅なソースコードの書き換えが必要になることがある。つまり特定ベンダーの技術に依存し、他の選択肢を採用しにくくなる「ベンダーロックイン」が発生するのだ。

 システムの移植をしやすくするには、Red HatやVMwareが提供するコンテナ管理製品やサーバ仮想化製品を利用して、インフラを抽象化するとよい。これらの製品は、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftなど、さまざまなベンダーのIaaS(Infrastructure as a Service)で実行できる。


 後編は、残る2つのリスクである「コスト」「セキュリティ」のリスクと、これらのリスクの影響を小さくする方法を説明する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia マーケティング新着記事

news170.jpg

AIの進化が加速する「プラットフォームビジネス」とは?
マーケットプレイス構築を支援するMiraklが日本で初のイベントを開催し、新たな成長戦略...

news029.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2024年12月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news166.png

2024年の消費者購買行動変化 「日本酒」に注目してみると……
2023年と比較して2024年の消費者の購買行動にはどのような変化があったのか。カタリナマ...