「5G」のネットワークインフラを「Open RAN」で構成することでどのようなメリットが見込めるのか。Open RANとは何かについて、Open RAN市場の動向と併せて説明する。
“オープンな無線アクセスネットワーク”を意味する「Open RAN」(Open Radio Access Network)は、「5G」(第5世代移動通信システム)市場が発展する中で莫大(ばくだい)な収益を生み出すと予測されていた。ところが、早くもOpen RAN関連の売上高は減少し始めている。
調査会社Dell'Oro Groupの調査によれば、世界のOpen RAN市場は同社が2019年に調査を開始してから予測を上回るペースで拡大し続けていたが、2023年の第2四半期(4〜6月期)に、調査を開始してから初めて売上高が前年同期比で縮小した。その背景を分析するに当たり、まずは「Open RANとはどういうものなのか」から説明する。
RANは、デバイスとコアネットワークの間の通信データを整理整頓して引き渡す役割を担う。モバイルネットワークに不可欠な要素だ。
5Gのデータ伝送速度や遅延、帯域幅は、「4G」(第4世代移動体通信システム)に比べて改善している。ただし5Gのその特徴を実現するには、新たなインフラと機器が必要だ。通信事業者がコストを抑えるために注目したのがOpen RANだ。
従来、RANを構成する機器同士のプロトコルやインタフェースの仕様は統一されておらず、ベンダーによって異なることがあった。そのため、異なるベンダーの機器同士では相互接続性や相互運用性が担保されていなかった。
Open RANはプロトコルやインタフェースの仕様がオープンになっているため、Open RANに準拠しているベンダーの機器同士であれば接続できる。そのため、通信事業者はコストを削減し、ベンダーロックインを防ぎ、相互運用性と使いやすさを実現できる。
以上の要素は、4G用のインフラを併用する「NSA」(ノンスタンドアロン)を使用するのではなく、5G用のインフラのみで構築する「SA」(スタンドアロン)を採用する通信事業者にとっては特に魅力的だ。
こうしたメリットを持つOpen RAN市場が減速している主な原因は、北米とアジア太平洋地域(APAC)での低迷だ。欧州での収益は増加しているものの、全体としては減少となった。米国や中国がOpen RAN市場の初期をけん引したが、これらの国では需要が落ち着きつつある。
今後の需要が見込めるのは、早期導入者(アーリーアダプター)ではなく、これからOpen RANを求めている通信事業者が存在する国だ。Dell'Oro Groupのバイスプレジデントであるステファン・ポングラッツ氏は次のように分析する。「米国や中国などのアーリーアダプターに他国の通信事業者が追い付きつつある」
世界各国で、通信事業者が5Gによるマネタイズに成功していないことや、物価の高騰によるコスト拡大も、Open RAN市場が減速する一因になっていると考えられる。
後編はOpen RAN市場が減速した理由を深掘りし、5G市場全体の見通しを分析する。
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