次世代ネットワークの要素の一つにホワイトボックスネットワークがある。企業は関心を寄せているが、普及していない。それはなぜなのか。次世代ネットワークの課題と併せて解説する。
ネットワーク技術が進歩する中で、次世代のネットワーク像が浮かび上がってきた。次世代ネットワークを構成する7つの技術のうち、6つ目の「ホワイトボックスネットワーク」と7つ目の「プライベート5G」を紹介する。
特定ベンダーの製品に依存せず、ノーブランド製品のスイッチやルーターを活用する「ホワイトボックスネットワーク」に企業が関心を寄せるようになっている。ホワイトボックスネットワークには、汎用(はんよう)的なハードウェアを使うことによるコスト低減や、カスタマイズの容易さからツールをネットワークに導入しやすくなるなどのメリットが期待できる。
しかし、こうしたメリットがあるにもかかわらず、ホワイトボックスネットワークの導入は進んでいない。「企業は関心を持っていても、ホワイトボックスネットワークの機器を提供している大手ベンダーはほとんどない」と、ITコンサルティング企業CIMIのプレジデント、トム・ノール氏は指摘する。
ただしノール氏によれば、モダンなネットワークの重要な側面となる可能性があるのがオープンネットワークだ。そのため専門家は、ホワイトボックスネットワークの導入を推進する方法を模索し続けているという。
企業がネットワークインフラをより自由に管理したい場合は、「5G」(第5世代移動通信システム)をユーザー組織が自営網として利用できる「プライベート5G」を構築してもいいだろう。
「プライベート5Gは従来のネットワーク機器で使用されるアプリケーションよりもIoTのアプリケーションに適している」とノール氏は述べる。
「モダンなネットワークを構築する課題の一つは伝搬遅延だ」とITコンサルタントのテリー・スラッテリー氏は指摘する。ネットワークの速度は依然として光速が限界であり、米国では1マイル当たり平均1ミリ秒程度の遅延が生じる。「移動体通信の仕組みやミリ波技術をうまく応用する方法を学ばなければならない」とスラッテリー氏は言う。
次世代ネットワークはその導入プロセスが課題となる。ほとんどの企業はネットワークの移行について、既存のインフラやシステムを作り替える「ブラウンフィールド」型のアプローチを採用するだろう。しかし、「企業ネットワークが複雑な場合、ブラウンフィールド型の移行をサポートするツールを見つけるのは困難だ」とグルンデマン氏は指摘する。
「標準的なネットワークデバイスや機能であっても、オーダーメイドのアーキテクチャや、自動化技術が成熟していないことで問題が発生する企業は少なくないだろう」(グルンデマン氏)
ゼロからシステムを構築する「グリーンフィールド」型のアプローチならば、次世代ネットワークの構築はブラウンフィールド型に比べて容易になるが、グリーンフィールド型を採用できる企業は限られている。
グリーンフィールドのアプローチで次世代ネットワークを構築する企業に向けては、グルンデマン氏は次のようにアドバイスを送る。「ネットワーク全体からデータを収集し、環境のあらゆる側面を包括的に可視化できる観測可能なツールを導入すべきだ」
ネットワークチームは企業ネットワークを次世代ネットワークに変革することでビジネスをサポートできる。スラッテリー氏によると、企業が次世代ネットワークを開発する最大の動機は、生産性を高め、競争に追い付くことだという。
「次世代ネットワークの開発に取り組まない企業は、システムの安定性が低下し、生産性の低い仕事をするリスクを抱えることになる。レガシーインフラから次世代ネットワークへの移行に伴い、企業はコストの削減と運用の改善に重点を置くべきだ」とノール氏は警告する。
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