IntelはAIアクセラレーター「Gaudi 3」といった新製品の提供を通して、AIプロセッサ市場での競争力を高めようとしている。AIプロセッサ市場でIntelはどう戦おうとしているのか。
AI(人工知能)技術向けのプロセッサ市場は、GPU(グラフィクス処理装置)で堅固な地位を築いてきたNVIDIA“1強”の状態だ。これに対して、IntelやAMD(Advanced Micro Devices)などの半導体ベンダーが、AIプロセッサ市場でのシェア獲得に向けて攻勢をかけている。AIアクセラレーター「Gaudi」シリーズの新製品を発表したIntelは、AIプロセッサ市場でどう戦おうとしているのか。
Intelは2024年4月9日に、AIアクセラレーター「Gaudi 3」を発表した。同製品はAIアプリケーション向けに設計されたNVIDIAのGPU「NVIDIA H100 Tensor Core GPU」(以下、H100)に対抗する製品だ。Gaudi 3は、企業が特定のベンダーに縛られる状態を回避する助けにもなるとIntelは説明する。
異なるプロセッサ間で、ソフトウェアの互換性を確保することを目指す業界団体「Unified Acceleration Foundation」(UXL)に加入しているIntelは、Gaudi 3でUXLの仕様に準拠したソフトウェアと標準的なイーサネットネットワークを利用可能にし、単一のコンピュータから大規模なサーバクラスタへの拡張を実現するとIntelはアピールする。
IntelはDell TechnologiesやLenovo、Hewlett Packard Enterprise(HPE)といったベンダーにGaudi 3の提供を開始した。IntelはAIモデルをトレーニングするためのツールを提供するAnyscaleと共同で、Anyscaleの機械学習モデル開発ツールの「Ray 2.10」がGaudi 3で利用可能であることも発表している。
調査会社Forrester Researchのアルビン・グエン氏は、Gaudi 3は速度や処理能力の面でNVIDIAのH100に匹敵するが、NVIDIAが2024年後半に提供を開始するGPUシリーズ「NVIDIA Blackwell」は超えない可能性があると話す。
グエン氏によると、IntelはGaudi 3の提供に当たり、製品そのものの性能だけでなく、エネルギー消費量の削減といったデータセンター運営の他の側面にも照準を合わせている。「純粋な性能だけではなく、エネルギーや持続可能性にも目を向ける必要があると同社は考えている。さらにIntelはさまざまな製品にAI技術を搭載することで、『あらゆる場所にAIを』というアイデアをアピールしている」(同氏)
「Gaudi 3に関する課題の一つは、Intelが圧倒的な勝利を見せつけられなかったことにある」。こう指摘するのはIT製品の性能テストを手掛けるSignal65のプレジデント兼ゼネラルマネジャーのライアン・シュラウト氏だ。かつてシュラウト氏は、Intelの最高性能ストラテジストを務めていた。
「『Gaudi 3に20億ドルを投資する』『Gaudi 3を5万個調達する』という大口顧客は登場しなかった。GaudiがGPU分野でNVIDIAやAMD(Advanced Micro Devices)に対抗するには、そうした顧客が必要だ」(シュラウト氏)
Intelは2024年6月にサーバ向けプロセッサの新シリーズ「Intel Xeon 6 Processors」を発表した。同製品は検索拡張精製(RAG)といった最新の生成AI技術の実行や、データセンター、クラウドコンピューティングなどでの使用を想定している。
2024年に発表予定のクライアントPC向けプロセッサ「Intel Core Ultra」シリーズ新製品について、IntelはAI PCやAIエッジアプリケーション向けになると説明する。
グエン氏によると、Intelはエッジコンピューティング向け製品の提供に当たり、データ転送能力に着目している。AIシステムは大量のデータを必要とする。そうしたデータを転送できることは、IntelのAI製品のエッジコンピューティング戦略に欠かせないと同氏は指摘する。「Intelはユーザーに近いエッジコンピュータで大量のデータを処理したり、推論を実行したりできるようにプロセッサの開発を進めている」(同氏)
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