製造業を中心に日本企業の間でサプライチェーンを強化する動きが見られる。自然災害などに負けない強固なサプライチェーンマネジメント(SCM)の構築が目的だ。主要なSCM製品、ベンダーの動向を探った。
東日本大震災やタイの洪水などで明らかになった日本企業のサプライチェーンの弱さ。世界で部材を調達し、生産、販売する製造業を中心にこのサプライチェーンを強化する動きが見られる。企業はSCMのどの分野に注目し、主要なベンダーはどのような製品戦略を持っているのか。ガートナージャパンのアナリスト 本好宏次氏への取材を通じてSCMの製品動向をまとめた(参考記事:【市場動向】企業が今再びSCMに投資している理由)。
企業のサプライチェーン管理は主に「計画系」「実行系」「調達系」の3つに分けることができる。計画系は、販売実績データなどから次の生産や輸送などの計画を立てる需給予測の機能が中心。他の部署との情報のやりとりも行うため、コミュニケーション機能も持つ。
実行系は需給予測の結果から実際の生産プロセスを管理する。同時に販売や物流のプロセスや結果も管理。在庫管理や倉庫の管理も実行系に求められる機能だ。情報のやりとりだけではなく、生産機器に対する指示を行うなど、幅広い機能を備える。
調達系は製品の製造に使う直接材や間接材の購買を管理する。企業内の各部署や拠点がバラバラに購買を行うと、過剰な注文をしてしまうなど無駄が発生する。社内で必要な調達を購買部門が一括して行えばボリュームディスカウントも期待でき、全体コストの削減が期待できる。
ガートナージャパンによると2011年の国内SCM市場は約270億円規模。そのうち、計画系が約50%を占め、実行系と調達系がそれぞれ25%程度を占めるという構図だ。企業はSCMへの投資を続けており、国内SCM市場は年率1桁%台の成長率を保っている。ガートナージャパンでは2016年まではSCM市場が緩やかに成長を続けるとみている。企業のSCMシステムはこれまで手組みが多かったが、コスト削減やより高度なSCMの利用を目的にパッケージ製品を導入するケースが増えているという。
次にSCMの各分野の動向を見ていこう。計画系についてはシミュレーションや予測の機能を重視するユーザー企業が増えている。ビジネス環境が急速に変化する中では、過去の実績から的確な生産量や供給量を示すのは簡単ではない。重要なのは現在の状況を分析し、シナリオを組み立てて、素早い意思決定をすることだ。そのためSCMのシミュレーション機能においても分析機能の高速化が求められている。処理が速くなれば、一定の時間に条件を変えて何度も分析をすることができ、より適切な解答を得られるからだ。
ガートナージャパンによると、国内の計画系ソリューションのベンダー別のシェアでは、SAPジャパンがトップ。次いで日本オラクルが入っている。SAP、オラクルともERPパッケージを持っていて、財務会計やCRMなど他のアプリケーションと連係できるのが特徴だ。グローバル展開する企業に広く導入されている。特にオラクルは、需要計画の立案と、製造・販売計画の最適化を行う需要管理アプリケーションベンダー、米Demantraを米本社が買収し、国内でもアプリケーションを提供している。その他のベンダーでは、国内でもユーザーが多かった旧i2 Technologiesを買収した米JDA Softwareの製品が広く使われている。JDAはマネジメントの視点で製造と販売の需給を最適化する手法「Sales and Operations Planning(S&OP)」のソリューションにも力を入れている。
国産ベンダーでは日立製作所がSCMの計画系ソリューションを提供する「SCPLAN」を用意している。SCPLANは高速な計算エンジンを持ち、サプライチェーン変更による結果を迅速にシミュレーションできる。SaaSによる提供も開始した。富士通の「GLOVIA/SCP」は需給調整計画の機能の他、顧客に対する納期回答に特化した機能を持つ。
実行系の機能についてもSAPとオラクルのシェアが高い。SAPは機能のカバー範囲が広く、製品比較をした際の検討候補に挙がりやすい。オラクルは物流管理ソリューションのベンダー、米Global Logistics Technologies(G-Log)を米本社が買収したことでSCMの実行系ソリューションを強化した。その他では国産のフレームワークスが実行系機能として倉庫管理システム(Warehouse Management System:WMS)と在庫管理に強みを持つ製品「Logistics Station iWMSシリーズ」を提供している。
その他のベンダーでは、IBMが買収したスターリングコマースの製品が注目される。IBMは他にユニカ、コアメトリクスを買収していて関連ソリューションを拡充している。専業ベンダーでは、SCM関連の幅広い製品を持つマンハッタン・アソシエイツが知られる。
調達系で注目されるのはSAPの動向だ。SAPは2012年5月、クラウドを活用した調達、購買ソリューションを提供する米Aribaを買収した。Aribaの顧客は世界で73万社以上。SAPはAribaのソリューションを統合し、自社のクラウドソリューションを強化する方針だが、SAPの従来のSCMソリューションと組み合わせることで顧客の囲い込みにもつながるだろう。その他のベンダーではオラクルの調達系ソリューションが広く利用されている。また、国産では住友電工情報システムの「楽々Procurement II」や伊藤忠テクノソリューションズの「マーケットアベニュー」が知られる。いずれも調達、購買プロセスの可視化を実現し、購買コストの削減につなげられるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業にとっては、いかに優秀な人材を確保するかが大きな課題となっている。そこで、AIとスキルインテリジェンスを活用することで従業員満足度を高め、定着率の向上、ビジネスの成長へとつなげていくための3つのステップを紹介する。
従業員にさまざまなサービスを提供するHR業務に、生成AIを導入する動きが加速している。生成AIは、HR業務が抱えている課題をどのように解決し、従業員エクスペリエンス(EX)の品質向上と組織全体の生産性向上に貢献するのだろうか。
紙やExcelを用いた人事評価業務では、進捗管理やデータ集計に多大な労力がかかってしまう。そこで本資料では、評価ツールを導入することで、評価に関わるさまざまな作業を効率化することに成功した事例を紹介する。
2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。
人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。
ERPからあぶれたスキマ作業をどうする? RPAやBIでは解決できない理由 (2025/4/4)
マンガで解説:紙と「Excel」の販売管理から卒業したい 実現しやすい方法は? (2025/4/2)
制度変更で取引先が数千件増える? 3カ月でシステム構築できた事例 (2025/3/25)
人事管理システムの選び方 失敗しないポイントは? (2024/9/18)
人材開発って何? 人材育成との違いは? 効果的な方法を知る (2024/9/18)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。