必要最小限のスタッフしかいない小売業界のあるスタートアップ企業は、IT部門の代役として、クラウドベースの分析機能を活用している。
米Urbioは、同社のWebページによると「マグネットを内蔵したモジュール式の壁掛け型整理箱」を販売する電子商取引(EC)のスタートアップ企業だ。マグネット式の掲示板に付せんや写真などを貼り付けるのではなく、マグネット内蔵コンテナを取り付けるのだ。このコンテナには植物を植えたり、事務用品やキッチン用品、雑誌などを入れることができる。使い方は自由自在。このコンテナを考案したのは工業デザイナーのボウ・オイラー氏とジャレド・アラー氏だ。
オイラー氏とアラー氏は2011年に米Kickstarter(編注;クラウドファンディングの手法を用いた資金調達サイト)でキャンペーンを立ち上げて資金調達に成功した。彼らのビジネスは始まる前からメディアで大きく取り上げられ、消費者の関心を集めた。システム運用部門の統括責任者としてブレア・スチュワート氏がUrbioに加わったのは、このときだ。スチュワート氏は、設立当初の日常的な業務を担当するために雇用された。日常業務に対応するためには電子商取引データを正確に把握する必要があった。具体的には、販売個数や最も売れているアイテム、よく売れる曜日や時間帯、発注元といった情報だ。
データは至るところにあり、簡単にアクセスすることができた。米Shopifyの電子商取引バックエンドプラットフォーム「Shopify」のCSVファイルに、米PayPalの「PayPalアプリ」、米Googleの「Google Analytics」のリポート(Webトラフィックと訪問者の関与についてのデータ)、そしてFacebookやTwitter、Instagram、YouTubeなどへの投稿。これらは全て草の根のマーケティング手法として使用されているものだ。
スチュワート氏にとって厄介だったのはIT部門が行うべき作業だった。データを分かりやすく精選および整理し、分かりやすい形で提示して、何らかの行動を誘引できるようにする必要があった。「情報は必要だったが、全てのデータに目を通して、データを整理することは避けたかった」とスチュワート氏は振り返る。起業して間もない会社を軌道に乗せようとしていた時期に、この作業をスチュワート氏が自分で行う時間も、この作業のために別の従業員を雇う余裕もなかった。
Urbioは、最終的にShopifyを活用することにした。スチュワート氏はShopifyに電話をかけ、のデータを理解するのに役立つリポート/分析ツールを探していると伝えた。その結果、米SumAllの「SumAll」および「DeepMine」という2つのツールを使用することになった。どちらもSaaSツールで、Shopifyアプリストアから入手可能だ。
スチュワート氏は、APIを使用してFacebook、Twiter、YouTube、Googleアナリティクスのデータを取り込んだという。DeepMineでは、SKUの情報や週間販売件数などの電子商取引データの詳細情報が提供された。これは非常に有益な情報だった。一方、SumAllでは、さらに多くのプラットフォームを接続することができた。SumAllは数週間でUrbioの分析結果にPayPalのデータを統合した。
SumAll最大の特性は、各種プラットフォームのデータを1つのインタフェースに取り込むことだとスチュワート氏はいう。Facebookの投稿と販売データを比較したい場合は、それぞれの棒グラフを作成して、2つのグラフを重ね合わせて浮き沈みを調べることができる。
「個々の数値とにらめっこする必要はない。現状の全体像を把握できる。また、必要な場合はデータを掘り下げることもできる。図やグラフは省略して、数値のみを確認することも可能だ」とスチュワート氏は語る。
Urbioには、このツールと共に成長する伸びしろがある。SumAllは、TwitterやInstagramなどのフィードを使用してソーシャルメディアのデータと接続できる。SumAllのCEOであつデーン・アトキンソン氏は、Instagramは「説明するのではなく示す」性質を持つため、活用するのが難しいマーケティングプラットフォームの1つだと公言しているが、スチュワート氏はこのようなデータについて、詳しい調査は行っていないという。「当社は小さな企業なので、エンジニアを複数の分野に分散させている。つまり、チームを召集して一部の分野について詳しい調査を行うことはできない。ただ、エンジニアが連携して準備を整えることは可能だ」(スチュワート氏)
Urbioは設立当時からオンライン限定で商品を販売し、SaaSツールを好んでいる。そのため、スチュワート氏が分析とリポートのツールを探すためにクラウドに目を向けたことは賢明な判断だったといえる。米Gartnerのアナリスト、ダン・ソマー氏によると、これは当然のことだという。少なくとも近いうちに、これがスタンダードになる見込みだ。
2014年春に開催された「Gartner Business Intelligence Summit」でソマー氏は「2014年には、企業の半数がクラウドBIの導入を検討するようになるだろう」と予測している。この理由として「データの重要性」を挙げている。データが大きくなるほど、ツールやサービスは遠くに追いやられるのではなく、引き寄せられるという現象が発生している。
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