「Windows 10」か「Chromebook」か、2015年のデスクトップ仮想化の主役は?2014年は「DaaSの年」だったが、2015年は?

専門家はDaaS、BYOD、Linuxのサポートを2014年の大きなトレンドだと考えている。2015年にはこれらのテクノロジーにまつわる弱点を解決する方法が誕生することを期待している。

2015年01月26日 12時00分 公開
[Margaret Jones,TechTarget]

 本稿では、仮想化に関する2014年の最大のトレンドを振り返ってみたい。2014年のトレンドは、2015年に待ち受けている状況を判断する一助にもなる。

 デスクトップ仮想化市場は、ベンダーによる製品の発表、リーダーの交代、戦略の微調整に関するニュースであふれていた。だが、ベンダー固有のトピックは、米TechTargetを代表する3人の専門家が2014年最大のトレンドとして挙げたものとは異なる。

 TechTargetの寄稿者でもある3人の専門家は、「モバイル」「BYOD(私物端末の業務利用)」「サービスとしてのデスクトップ(DaaS)」「Linux」および米Microsoftの「Windowsの進化と結末」が2014年最大のトピックだと述べている。また、このようなトレンドにまつわる弱点を解決する方法が2015年に誕生すると予測している。2014年の動向と2015年に待ち受けているものに関する各専門家の見解を以下に示す。

ブライアン・ポージー氏

 個人的に2014年最大のトレンドだと感じたのは、「VDI(仮想デスクトップインフラ)」とBYODの境界が曖昧になったことだ。ユーザーがモバイルデバイスから仮想デスクトップにアクセスする頻度は高くなっている。その結果、「MDM(モバイルデバイスの管理)」、セキュリティおよびサポートが多くの注目を集めた。

 2015年には、クロスプラットフォームのサポートがさらに重視されるようになると考える。仮想デスクトップ、仮想アプリケーション、従来のアプリケーションが、各種デバイスで同じ外観を持ち同じように動作することを保証するための大きな後押しがあるだろう。また、どの種類のデバイスを管理するときでも一貫した操作性を確保するために、MDMベンダーは積極的な取り組みを行うはずだ。この分野については足らないところが目立つ。

 数日前、機能にほとんど一貫性がない、あるMDMツールを調査していた。ある機能はWindows PCで動作するが、米Googleの「Android」搭載デバイスでは動作しない。一方、Android搭載デバイスで動作するが米Appleの「iOS」搭載デバイスでは動作しない機能もあった。これはごく一般的な問題で、すぐにでも対処する必要があるものだと個人的には考えている。

ロバート・シェルダン氏

 興味深いと感じたのは、これからリリースされるWindowsデスクトップOSの将来だ。また、この点については今後も目が離せないだろう。

 Microsoftは仮想化周辺のライセンス構造を2014年に緩めた。だが、この変更は「ソフトウェアアシュアランス(SA)」の契約者を対象としたもので、Enterprise Editionの製品に限られている。そのときですら、MicrosoftはDaaSについて言及しなかった。つまり、中小企業は蚊帳の外に置かれたも同然だ。また、「Windows 8」は苦戦を強いられている。これまでの導入は、Windows 8に移行せざるを得なかった顧客が導入した結果にすぎない。「Windows XP」のサポートは終了し、「Windows 7」のサポートが終了する日もそう遠くはない。Windows 8を使用することを強いられた消費者と企業はMicrosoftの対応を快く思っていない。

 ここにクラウドコンピューティング、モバイル、HTML5、仮想化の進歩が加わることで、何でも可能な領域に移行しつつあるように思える。このような可能性の1つとして、デスクトップ産業におけるMicrosoftの牙城を崩すテクノロジーが出回っていることが挙げられる。

 仮想化によってシンクライアントコンピューティングという概念は、いつでも実現できるようになりつつある。その結果、OSの重要性が大幅に低下している。社内で仮想化を行うか、DaaSを経由するかは関係ない。つまり、Googleの「Chromebook」のような選択肢が新たに出現するのを目の当たりにする可能性がある。管理者は、デフォルトの設定を使用してLinuxを搭載したデスクトップPCでWebベースのアプリやシンクライアントを実行できる。Google、米NASA、スイスCERN、米国防総省といった名だたる組織が、既にLinuxを搭載したデスクトップPCを使用している。

 Windowsは依然として世の中の主要OSとして君臨している。この状況を支えるのは、Windowsベースのアプリケーションとサービスだ。だが、Microsoftですら、多くの分野でクラウドベースモデルへの移行を進めており、この方向に進み続けることを約束している。

 例えば、Microsoftの「Microsoft Office 365」は、iOSデバイスとAndroidデバイスで、無料で利用できるようになった。また、Microsoftの「Microsoft Office Online」(旧称、Office Web Apps)には、複数の種類のWebブラウザからアクセス可能だ。Windowsがその姿をすぐに消すことはないが、近いうちに変化があるのは間違いない。将来、デスクトップ仮想化、特にDaaSは、私たちが現時点では認識すらしていない方法で重要な役割を担うだろう。

アリステア・クック氏

 何年も前からVDIをSSDに配置することを説いてきた。だが、2014年は、VDIにSSDを使用していない顧客よりも、使用している顧客と話すことが多かった1年だったと考える。新しいベンダーが市場で勢いを増し、VDI用の優れたストレージを提供している。例えば、米Nimble Storageや米Pure Storageなどだ。既存のベンダーも、フラッシュのパフォーマンスを活用したストレージの提供に適宜取り組んでいる。デスクトップ1台当たりほぼ無制限のIOPSを提供するというコストパフォーマンスの向上により、VDI導入最大の弱点は解決されている。

 2014年はDaaSがブームになった。「DaaSの年」といえるほどではないが、複数の大手ベンダーが突如としてDaaSをサポートするようになった。DaaSには興味深い用途が幾つかある。その最たるものは、Windowsデバイスを使用しなくなったときに、Windowsアプリケーションの寿命を延長できることだ。2015年には、ぜひとも本物のモバイルシンクライアントにお目にかかりたい。米VMware、米NVIDIA、GoogleがChromebookから仮想デスクトップにアクセスできるようにしたことは、かなり興味深い出来事である。より安定したインターネット接続がホテルで提供されるようになれば、旅行先にChromebookだけを持って行き、クライアントPCの紛失や破損について心配することもなくなるだろう。

 2015年には、データセンターの非仮想化ベースのデスクトップに関心が集まると予想している。仮想マシン(VM)ではなく、物理コンピュータにリモートデスクトップセッションホスト(RDSH)を導入しているある顧客と次のような話をした。VMでRDSHを実行するとVMにかなりの負荷が掛かる。一方、64ビットOSなら、RDSHは最新サーバの性能を十分に活用することができる。

 米Hewlett-Packardの「HP Moonshot System」などのカートリッジベースのコンピューティングは、さらに密度を高めることを可能にした一歩進んだブレード構造の段階だ。

 それからオープンソースのVDIもある。仏パリで2014年11月に開催された「OpenStack Summit」で、OpenStackのクラウドからVDIのデスクトップを提供するという初期段階にあるプロジェクトに関する話を聞いた。ハイパーバイザーのライセンスコストがVDIのコストに占める割合は大きくない。だが、コストを抑えられる機会は利用するに越したことはないだろう。Linux搭載デスクトップPCベースのVDI製品は既に出回っている。仮想化プラットフォームと仲介料金が無料になったらどうなるか考えてみてほしい。この状況で残念なのは、VDIがアプリケーションに他ならず、多くの企業ではLinuxのアプリケーションではなく、Windowsのアプリケーションを使用していることである。

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