企業も学ぶべきデータ防衛の手法
米軍が選んだ「iPhoneにデータを残さない」ソリューション、VMIの安全性とは
仮想モバイルインフラ(VMI)は企業分野で普及の兆しが見えるが、米国防総省は以前から、仮想モバイルアプリケーションがセキュリティ強化に役立つと考えてきた。
データのセキュリティを重視する企業は、米国防総省がモバイルコンピューティングのセキュリティを強化する手段として仮想モバイルインフラ(VMI)を利用していることが参考になりそうだ。
VMIは最近、民間企業の間で関心が高まっている。一般消費者向けの技術が次々と企業に進出する中、これに対処するのに役立つ手法としてVMIが注目されているのだ。だが、ずっと以前からVMIに注目してきたのが米軍である。米軍はこの数年間、モバイル仮想化の研究を進めてきた。VMIが米軍のモバイルアプリケーション用として十分に安全であるなら、セキュリティ意識の高い企業にも適した技術だといえそうだ。
VMIを利用した場合、「Android」の仮想マシン(VM)は企業のデータセンター内のハイパーバイザー上で動作し、ユーザーの端末上のクライアントを通じて仮想モバイルアプリケーションを配信する。今のところ、VMIのホストOSとして利用できるのはAndroidだけである。米Appleの「iOS」上ではVMが動作しないからだ。
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VMI分野における米軍の取り組みとしてよく知られているのが、国防総省と米Hyporiによる共同開発だ。HyporiはVMI技術を専門に手掛けるソフトウェア企業。国防総省とHyporiは、セキュアな米軍ネットワーク上でVMIを配布するためのプラットフォーム「Android Cloud Environment(ACE)」を共同で開発した。
ACEプラットフォームは、軍関係者がどこからでも市販のAndroid端末あるいはiOS端末上で仮想Androidアプリにアクセスすることを可能にする。これらの端末にはACEクライアントさえあればよく、それ以外に変更を加える必要はない。クライアントはローカル端末上で仮想アプリのイメージを展開するが、ユーザーの端末にデータが保存されることはない。
仮想アプリの利用は米軍にとって必要な防御を提供する。軍の情報が端末に保存されないので、端末の紛失や盗難による脅威が減少するからだ。またIT部門がACEプラットフォームへのアクセスを遠隔操作によって遮断すれば、端末を手に入れた人物が誰であろうとVMIアプリからデータにアクセスできなくなる。
ACEプラットフォームがあれば、軍の部隊は20~100ユーザーをホスティングできる専用マイクロサーバを導入することが可能になる。ユーザーは、異なる分類のネットワークや任務に対応した複数の仮想端末にアクセスできる。各部隊はサーバをハンヴィー(多用途軍用車両)に載せて容易に移動できるので、サーバに保存されたデータが危険にさらされる心配がない。
国防総省はVMIを利用することによって、米国家安全保障局(NSA)が導入した「Commercial Solutions for Classified Program(CSfC)」を受け入れた。これは、分類された米国国家安全保障システム上で商用製品を使えるようにするためのプログラムだ。このプログラムに含まれる「Mobile Access Capability Package」はモバイル通信の安全を確保する。HyporiのACEサーバとモバイルクライアントは、NSAの「CSfC Components List」に登録された最初のVMI製品である。同リストには、米国家安全保障システム委員会が承認した製品が含まれる。
こうした取り組みは、米軍がモバイルアクセスのセキュリティを強化するために仮想化技術の活用を真剣に考えていることを示すものだ。軍関係者は、データセキュリティの侵害の不安なしに、チャットによるメッセージング、分隊間の通信、集結地点の指定などの用途に必要なアプリにアクセスできる。企業の場合は利用形態が異なるが、同じ理論は職場にも適用できる。企業はVMIを使って業務アプリやデータを従業員の私物端末に配信することにより、業務効率の向上とリスクの低減を期待できる。
HyporiがACEプラットフォームを発表したのは2015年3月だが、国防総省はそれよりもずっと前からACEとVMIを真剣に検討していた。もちろん米軍が対処すべき課題の中には、企業では発生しないようなものも多いが、モビリティとデータセキュリティのバランスを図る必要がある企業は、国防総省におけるVMIの活用事例は1つのモデルとして参考になるはずだ。
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