システム改善が見えてくる
シャドーIT解決のヒントは「長いものには巻かれろ」
シャドーITのリスクを最小化する最善の方法は「長いものには巻かれろ」という古いことわざに従うことだと考えているIT担当者も少なくない。しかし、その言葉には「諦観」とは異なる建設的な意味が隠れている。
ビジネス部門やエンドユーザーが個人的な目的を果たすためにIT部門の束縛から逃れようとするのは、今に始まったことではない。最近ではクラウドを通じて幅広いサービスが利用できるようになったこともあり、シャドーITと呼ぶ現象は大々的に広がっている。
昔もそうだが管理機能が発達した現代においてもシャドーIT対策を講じるのは難しい。興味深いのは、企業ではシャドーITと戦うのではなく、受け入れるアプローチが一般的になってきていることだ。
Homes.comやBoattrader.comなど、26もの情報サイトを運営し、これら情報サイトの大半をホストするために2つのデータセンターを運営しているマーケティング会社のDominion Enterprisesでバイスプレジデントと最高情報責任者(CIO)を兼任するジョー・フラー氏は、シャドーITの対策について「長いものには巻かれろ」と表現する。
「シャドーITと戦うのではなく、受け入れるようにしている」(フラー氏)
フラー氏の部門は、データセンターからAmazonの「Amazon Web Services」(AWS)とMicrosoftの「Microsoft Azure」に直接接続を提供している。Dominionの社内ホスティング比率は、AWSのホスティング比率に近い。「ホスティング料金の明細書を社内のビジネス部門に送るときは、クラウドの請求額の要約も含めている。このような情報を含めることで、社内と社外で何に対して費用を使っているかをビジネス部門の幹部が理解できる」とフラー氏は語る。
Dominionでは社内のAWSとAzureのシステム/ネットワークエンジニアにトレーニングも実施している。その目的は、IT部門のホスティング環境外で、エンジニアがこれらのサービスを使用する開発チームのリソースにすることだ。
シャドーIT対策を立てるための主な4つのステップ
ミシガン大学でIT部門のディレクターを務めた経験のあるティム・ロールストン氏によれば、ミシガン大学でもシャドーITは約10年にわたって続く問題だったという。この状況によって、同校のIT部門は公式のITサービスによるシャドーITの管理と統合に習熟した。その経験に基づき、ロールストン氏はシャドーIT対策を立てるときには次の4ステップによるアプローチを推奨している。
ステップ1:導入の道筋を作る
大半のユーザーは、公式なITシステムが対処していないニーズを満たすためにシャドーITを利用する。ロールストン氏はこうしたシャドーITを“ギャップソリューション”と呼んでいる。
「管理下にある環境でうまく機能しているギャップソリューションを見つけたなら、それを受け入れるべく資金を投入するべきだ。適切な価値があるなら、そのシステムをサービスカタログに取り入れるのがいいだろう」(ロールストン氏)
ステップ2:既存のサービスへの適応を検討せよ
ユーザーにとって、シャドーITで使うアプリやサービスは会社のIT部門が提供する同じ機能のアプリやサービスより使いやすい場合がある。そのため、そのようなアプリやサービスの使用を禁止するより、IT部門が提供するアプリやサービスの不満を解決することを検討すべきとロールストン氏は指摘する。
次に、サービスに変更を加えて、その理由をユーザー全体に伝達する必要がある。可能であれば、検討プロセスにシャドーITのユーザーを巻き込んで、IT部門が新たに導入するアプリやサービスを全社的に勧めるように働きかけるのも有効な手だ。「シャドーITで一連の業務フローを組み上げてしまった者は高く評価しなければならない。そうすることで、他のユーザーが新たなシャドーITを作るのではなく、IT部門にニーズを伝えるよう促すことができる」(ロールストン氏)
ステップ3:シャドーITを上回るサービスをエンドユーザーに提供できない場合でも、そのシャドーITをつぶしてはならない
小規模なシャドーITシステムに勝るサービスを提供できない可能性がある。その場合は、シャドーITの継続運用を認め、あらゆるサポートや投資を可能な範囲で提供すべきだろう。「アプリをサポートする資金的な余裕がない場合は、そのことを率直に話さなければならない。そうすることで、シャドーITが深く埋もれて見えなくなり、その特定がほぼ不可能になる状況を防ぐことができる」(ロールストン氏)
ステップ4:自社製のITを表彰せよ
最も優れた自作ITシステムを使用しているか、既存のITサービスの向上について最も的確な提案をしたエンドユーザーには、企業が表彰や特典を与えるべきだろう。「そうすることで、社員がシャドーITに手を出す前に、自社製のシステムや不満点について意見を伝えるよう促せる」(ロールストン氏)
シャドーITのリスクを取り除くための改善
ここで紹介した4つのステップが全ての企業に適しているとは限らない。だが、「これらのステップによって、IT部門は同じ会社の仲間であって“敵対心”を持っているのではないことを従業員に理解してもらえる」とロールストン氏は補足する。
シャドーITの存在は、IT部門がビジネス目的を満たせていない証しになる。「重視すべきはシャドーITの管理や排除ではなく、それを不要な状態にすることだ」とBen Piper Consultingの創立者でITコンサルタントを務めるベン・パイパー氏は指摘する。
シャドーIT対策を講じる場合、IT部門はあらゆる要望に対してその理由となるビジネス目標を特定しなければならない。新しいソフトウェアをインストールする要望が寄せられれば、その理由を確認して本当のビジネスニーズを明らかにする必要がある。「IT部門が自分たちをサービスプロバイダーと考え、ビジネスコンサルタントとしての役目を放棄しているケースはあまりに多い。ITマネジャーはIT部門が購入する全てについて、それによって提供するサービスではなく、達成できるビジネス目標について説明できなければならない」とパイパー氏はいう。
シャドーITのリスクは常に存在し、それは今後も変わらない。そう語るのは、セキュリティコンサルタント会社New Contextのセキュリティサービス部門でバイスプレジデントを務めるアンドリュー・ストームス氏だ。シャドーIT対策を講じるとき、IT部門が取る最善の行動の1つはコミュニケーションとストームス氏は語る。「他部門に出向いて、ユーザーと話をするべきだ。信頼関係を育むことで、ユーザーのニーズや問題点が理解できるようになる」(ストームス氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
9
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
10
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー