隠れたオブジェクトストレージのメリット「バックアップ不要説」は本当かここが違う、従来型ストレージとオブジェクトストレージ【後編】(1/3 ページ)

この記事では2回に分けてオブジェクトストレージの特徴とメリットを解説する。後編では、可用性とデータ保護手法から有力ベンダーの適材適所の考察を紹介する。

2017年06月28日 05時00分 公開
[Scott LoweTechTarget]

前編では

この記事では2回に分けてオブジェクトストレージの特徴とメリットを解説する。前編では、階層構造で管理する従来のファイルシステムと比較したオブジェクトストレージのファイル管理方法を説明し、従来型のファイルシステムとオブジェクトファイルシステムを比較したファイル管理手法の違いと、その違いに起因するそれぞれのメリットとデメリットを表にまとめて紹介している。


オブジェクトストレージの可用性とデータ保護

オブジェクトストレージを提供するベンダーは数多く、それぞれに得意とする側面が異なる。自分たちの目的に合ったベンダーを選ぶのが肝要だ

 ストレージが利用可能な状態を維持しながらデータ保護を確保することは、IT担当者にとって最も重要な任務の1つだ。

 この任務を達成するために、ストレージ担当者はRAIDアレイとバックアップシステムを導入する。RAIDはハードウェア障害からデータを守るのに役立つが、RAIDでは不十分な場合や、RAIDでは保護できない災害が発生した場合には、バックアップシステムとリカバリーシステムが介入することになる。

 一般的にオブジェクトストレージアーキテクチャには、ハードウェア障害や災害からデータを守るためのデータ保護手法が1つ以上組み込まれている。必ずしも全ての企業に当てはまるわけではないが、オブジェクトストレージを利用すると、サードパーティーのバックアップソフトウェアや復旧ソフトウェアが不要になる可能性がある。このような方法は幾つか存在する。

イレージャーコーディング

 これは従来のRAID実装に比べてやや複雑だ。ただし、その複雑さを管理者から見えなくして、全体的によりシンプルな環境に見せることを狙いとしている。

 イレージャーコーディングでは、まず多数のパリティセグメントをデータブロックに追加する。そして、これらのパリティセグメントをさまざまな場所に分配することで機能する。例えば、ストレージシステムで10台+6台のドライブによるイレージャーコーディング手法を採用しているとしよう。パリティブロックは16台のドライブに分散する。だが、これらのドライブのうち、10台を利用可能な状態で維持していれば、継続的にデータを取得できる。つまり、任意の6台のドライブについては障害が発生しても構わない。10台のドライブが動作している限り、システムの稼働状態は維持できる。

 1台のドライブに障害が発生した場合、そのドライブを交換すると消失したデータブロックは稼働状態を維持している10台のドライブから再構築する。この仕組みによって、RAIDと比べて短時間でデータを復旧できる。大容量ドライブほどこの効果は顕著だ。

 迅速にデータを再構築できるだけでなく、イレージャーコーディングは容量のオーバーヘッドに関しても効果的だ。また、従来型のファイルベースやブロックベースのストレージでも使用できる。ただし、イレージャーコーディングは複雑で集中的なコンピュータ処理が必要なプロセスであるため、これらのストレージで実装することはほとんどない。

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       1|2|3 次のページへ

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。