「RPA」製品は定型的なビジネスプロセスの効率化に貢献する。ただし古くなったERP製品を延命させる手段にはならない――。専門家がこう警告するのはなぜなのか。
かつて導入した「ERP」(統合業務)製品は、古くなるにつれてさまざまな新しいアプリケーションとの連携が難しくなり、使い続けるほど人の細かい手作業が複雑に重なり合うようになる。例えばレポート作成のために、最新のアプリケーションとERP製品のデータを手作業で組み合わせることが必要になれば、時間がかかって効率が悪くなる。推論やイノベーションといった付加価値の高いタスクに割り当てるべきリソースも無駄に消費されてしまう。
前編「ERP刷新までの“つなぎ”としてこそ『RPA』を使うべき理由」で説明した通り、人の手でやると効率の悪い、こうした反復作業にこそ「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)が効果を発揮する。RPA製品ならアプリケーションへのデータ入力や、異なるアプリケーション間のデータのやりとりも簡単に実現できる。RPA製品で構築したソフトウェアロボットは「間違いを犯す心配がなく、必ずプログラムした通りに実行する」と、ITコンサルティング企業Saggezzaでビジネスアドバイザリーサービス担当シニアディレクターを務めるカピル・カロケ氏は話す。
RPA製品はERP製品に関連するプロセスを改善し、企業向けのシステムやビジネスの速度を高める。ただし「使えなくなったレガシーシステムを延命させる手段にはならない」と専門家は警告する。
「企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の目標に向かって進む上で、RPA製品は費用対効果の高い手段だ」と、調査会社Forrester Researchのバイスプレジデント兼アナリストであるクレイグ・ルクレア氏は指摘する。ただしERP製品をアップグレードしたり、クラウドサービスに移行したりする方が、よりモダナイズされたシステムを構築できることもある。そうした場合にまでRPA製品を導入するのは「戦略上、問題がある」とルクレア氏は語る。
電子部品を販売するAvnetでエンタープライズエフェクティブネス担当バイスプレジデントを務めるステファン・マウラー氏の見方も同様だ。「RPA製品は古いERP製品の欠点を補ったり、会社にとって有効でなくなったERP製品を使い続けたりするためのものではない」とマウラー氏は強調する。RPA製品はビジネス価値を生み出す有意義な手段ではあるが、古い技術をサポートする手段ではないと同氏は考えている。
企業は自社のERP製品を継続的に評価し、ビジネス要件を満たしているかどうか、むしろ阻害していないかどうかを確認してから、RPA製品の導入を検討すべきだとルクレア氏は言う。「レガシーシステムをアップグレードする方がよい場合は、RPA製品を導入すべきではない」と同氏は指摘。逆にERP製品とバックオフィスプロセスをアップグレードしても企業としての競争力が高まらないのなら「RPA製品は非常に有効な手段になる」と語る。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
システム開発会社では、新規顧客との接点を作るためにテレアポ代行などのアプローチを採用するケースも多いが、案件の質に悩むことも少なくない。この問題を解消する商談マッチングサービスの活用術を、事例を基に解説する。
クラウドへの投資を最適化することは、企業にとって重要な課題の1つだ。課題解決にはクラウドのコストと利用状況の可視化が不可欠だが、多くの企業でそれがかなえられていない。そこで、AWSのコストを最適化する方法を紹介する。
マルチクラウド環境を活用していく上で課題となるのが、各クラウドに提供される標準ツールの学習コストやクラウドを跨いでデータをつなぐ場合にかかる時間だ。大日本印刷の取り組みから、この課題の解決方法に迫る。
中小・スタートアップ企業の中には、新規案件の獲得に課題を抱えている企業も多い。本資料では案件獲得の代表的な3つの手法を紹介するとともに、それぞれのメリット/デメリットや自社に適した方法を選ぶためのヒントを解説する。
ECサイトへの「3Dセキュア2.0」の導入が義務化され、多くの企業が対応を進めているが、対策を間違えると売り上げの低下を招いてしまう可能性がある。不正利用を抑止しつつ、売り上げを守るにはどうしたらよいだろうか。
2025年の「IT導入補助金」で中堅・中小が導入すべき2つのツール (2025/3/31)
申請業務のシステム化が難しい理由とその解決策とは (2024/9/27)
運用・管理はお任せ 生成AIを安全に活用できるRPAプラットフォーム (2024/5/16)
オンライン研修で情報処理安全確保支援士の取得と維持を支援 (2024/2/1)
セキュリティ対策にDX 情シスが「やりたくてもできない」状況から脱するには? (2024/1/29)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...