各業界で「無線LAN」を補う「5G」【後編】
学校や病院が「無線LAN」に加えて「5G」を使うべきこれだけの理由
「5G」が大きく変える可能性のある業界が、教育と医療だ。学校や病院の現場を、5Gはどのように変えるのか。具体的な活用例とともに紹介する。
教育機関は以前から、PCやタブレットといった「無線LAN」に接続するデバイスを利用してきた。「5G」(第5世代移動通信システム)によるイノベーション(技術刷新)の機が熟しているのも教育の分野だ。
ホワイトボードやプロジェクター、教科書など、何世代にもわたって教育機関を支えてきた道具がある。一方で、学習者を地理的に離れた場所や宇宙ステーションに、仮想的に移動させることが可能な教室を想像してほしい。学習者は教室を離れることなく、そうした遠隔地を歩き回って探検できる。
5Gによる“革新的な体験学習”を導入
5Gの高速かつ大容量のデータ伝送と、低遅延という特徴は、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の可能性を解き放つ。実際に遠隔地にいるような体験を可能にして、生徒が学習するための新しい方法を提供する。
米国アイオア州クリーブランドにある8年制のチャータースクール(特別認可を受けた学校)Cleveland Entrepreneurship Preparatory Schoolは、Verizon Communicationsの支援を受けて5Gを導入した。2021年までに100校に先端技術を提供するという、Verizon Communicationsが推進するプロジェクトの一環だ。同校の実験室はARステーションとVRステーションを完備し、学習者はコンピュータが生成する高画質の画像を見たり、惑星を至近距離で観察したり、人体の内部を旅したりする体験ができる。
これほどの先端技術を導入している教育機関はまだほとんどない。5Gの技術が成熟し、より導入しやすくなると、こうした形の体験学習が普通になることが考えられる。
5Gと遠隔診療
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、医療業界の急激な変革を加速させた。医療機関は対面による患者との接点をできる限り減らす取り組みを進め、COVID-19の患者以外に対する遠隔診療を実施するようになった。無線LANは医療サービスを提供するに当たって重要なインフラになる。患者は自宅の無線LANを使って医師や看護師と連絡を取り、診察を受けている。
さらに医療機関が5Gを使うことで、遠隔診療の様相が一変する可能性がある。2020年にCOVID-19の感染が広がってから遠隔診療が急速に拡大した。その一方で、患者は安定した通信ができず、オンライン診療が受けられないこともある。安定した通信ができない地域で5Gを利用できるようにすることで、緊急度の高い治療を迅速に受けられる患者が増える可能性がある。
5Gによる遠隔診療の強化は、パンデミックの間だけではなく、医療の選択肢が少ない地方にとっては長期的なメリットになる話だ。米国では、地方の医療機関の閉鎖が相次ぐ傾向が続いており、そうした地域において遠隔診療の実現は差し迫った課題になっている。
院内に無線LANを導入している医療機関は少なくない。それに加えて、医療分野のIoT(モノのインターネット)デバイスを5Gに接続することによって多大なメリットを引き出せる可能性がある。患者のリアルタイムでの経過観察を遠隔で実施することが一例だ。遠隔で経過観察をする際、データ伝送速度が遅く、途切れ途切れの接続になることは許容できない。大容量かつ低遅延の通信ができる5GにIoTデバイスやウェアラブルデバイスを接続することで、医療機関は迅速な判断を下し、信頼性の高い治療を提供できるようになる。
ニーズは無線LANと5Gの両方にあり
5Gは大きな可能性を秘めており、各業界における変革の中心的な役割を果たす。一方で無線LANは、強調しても強調し切れないほど私たちの生活や社会において重要な役割を果たしている。無線LANが担う役割については、5Gに関連した話題の中で見過ごされがちだ。5Gが普及しても、標準規格「IEEE 802.11」準拠の無線LANがなくなることはない。5Gも今後さまざまな業界が導入し、既存の課題を解消する重要な役割を果たすことになる。
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