「テープ」の厄介な問題とは? 大学のIT責任者“嘆き”の理由テレワークで変わるストレージ運用【中編】

テープをバックアップ用として使用することには、メリットもデメリットもある。米国の2年制大学MVCCもテープを使用してきたが、同校のITインフラの責任者は、ある理由からテープへの不満と怒りが噴出した。

2022年07月27日 05時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

 米国の2年制大学Moraine Valley Community College(MVCC)には2万4000人以上の学生が在籍する。IT部門のスタッフ数は約50人だ。

 MVCCでITインフラの責任者を務めるデニス・セージ氏は、テープシステムによるバックアップは「厄介で時間がかかるものだ」と語る。MVCCは大学とは別拠点でテープを保管するために、テープの回収を業者に毎週依頼しなければならなかった。他にも、同校がテープシステムの維持に耐えられなくなる幾つかの理由があった。

「テープ」に付随する厄介な問題 担当者“嘆き”の理由とは

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 テープの回収以外にも、手間のかかる運用管理に頭を悩ませていたとセージ氏は説明する。例えば誤って削除したデータを復元にするのには、最低でも4時間はかかっていたという。「復元作業に1日かかりきりになっていたスタッフもいる」(同氏)

 組織におけるIT部門のスタッフは概して、複数の仕事を同時に抱えている。MVCCのIT部門も同様であり、人的なリソースに余裕があるわけではない。「バックアップの担当者は毎週30時間以上の時間をバックアップ作業に費やしていた」とセージ氏は嘆く。

 MVCCがテープシステムの利用をやめたのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)でテレワークになったことがきっかけだ。テープシステムの運用管理に手間がかかり過ぎていたことと、データの復元に時間がかかることがテープシステム廃止の決め手になった。

 パンデミック中にロックダウン(都市閉鎖)になり、テープシステムによるバックアップの問題は悪化した。バックアップの担当者は、現地に不在の状況でテープを回収する業者との段取りを決める必要があり、ストレスが増した。こうして、大学で作業する必要のないクラウドストレージは同校にとって魅力的な選択肢になった。

 MVCCは、クラウドストレージを利用する幾つかのバックアップサービスを検討した。Veritas TechnologiesやVeeam Softwareのバックアップサービスもその候補だった。同校が最終的に選んだのは、Rubrikのバックアップサービス「Rubrik Cloud Data Management」だ。

 要件としてMVCCが特に重視したのは、オンプレミスのコンポーネントがある製品・サービスだった。「クラウドサービスを中心にしたシステムであっても、オンプレミスで利用できる機能があれば問題なかった」(セージ氏)

 Rubrik Cloud Data Managementを選んだ決め手は、オンプレミスのバックアップアプライアンスを設置し、そのデータをオンプレミスのシステムとクラウドサービスの両方から閲覧できる機能が用意されていたことだ。これに加えて、セージ氏は遠隔のバックアップ用としてWasabi Technologiesのクラウドストレージを併用することを決めた。Wasabiのクラウドストレージは、Rubrik Cloud Data Managementのアーカイブやスナップショットの機能と相性が良かったという。

 クラウドサービスを中心にしたバックアップシステムに入れ替えたことで、テープシステム利用時と比べると「バックアップ作業の時間が10分の1に短縮できた」とセージ氏は語る。

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