「Wi-Fi 6」が“当然の選択肢”になったこれだけの理由“大成功した無線通信”の歴史と今後【第5回】

企業のネットワークにおいては有線LANが主流だった時期がある。だが「Wi-Fi 6」が普及しつつあるのと同時に、無線LANに対する企業の見方は変わった。目覚ましい進化を継続してきた無線LANは、以前と何が違うのか。

2023年05月05日 05時00分 公開
[John BurkeTechTarget]

 特に安定した接続が必要な企業ネットワークにおいて、無線LANは有線LANの“補助的な役割”にとどまっていた時期があった。無線LAN規格「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)が普及する中、状況は変わり始めている。無線LANは何が変わったのか。

当然の選択肢になった「Wi-Fi 6」 過去の無線LANとは別物に

会員登録(無料)が必要です

 IEEE 802.11axが2019年に標準化するに至るまで、IEEE 802.11は新バージョンが出るたびに、データ伝送速度や、複数のクライアント端末が接続する際の安定性などを向上させてきた。それと並行して、企業における無線LANの利用が広がった。

 以前は、企業におけるネットワークは有線LANが一般的だった。無線LANは、有線接続が不可能な場所でのみ使用する“ぜいたく品”のような存在から、有線接続の補助的な役割を果たすようになり、そして有線LANを完全に置き換え得る存在へと変わってきた。

 スマートフォンやノートPC、デスクトップPC、プリンタ、その他IoT(モノのインターネット)機器を含め、企業内においてさまざまなデバイスの接続に利用するネットワークとして、無線LANがデフォルトの選択肢になっている。その理由は、無線LANが有線LANに劣らない安定性やデータ伝送速度を実現したことと、オフィスでは有線LANを使うためのケーブルの配備がないことが珍しくなくなっていることだ。

 2019年にIEEE 802.11axが標準化し、無線LANは新たなフェーズに入った。無線LANの業界団体Wi-Fi Allianceは、IEEE 802.11axの製品認証プログラムを「Wi-Fi 6」と命名した。これは「Wi-Fiの6世代目」という意味だ。Wi-Fi Allianceが世代を識別する命名法を適用したのは、IEEE 802.11axが初めてだった。それ以前は、どの規格であっても認証済みの製品については単に「Wi-Fi」の呼称を適用していた。

 命名法が変わった理由の一つは、IEEE 802.11axが過去の無線LAN規格の進化を包括的に継承し、大きな進化を遂げた規格であるため、過去の規格とは明確に区別した方がよいという判断があったためだ。もう一つの理由は、モバイルネットワークでは「5G」(第5世代移動通信システム)や「4G」(第4世代移動通信システム)といったように世代で呼称することが一般的になっていること。これに合わせ、無線LANも同様のブランディング戦略を採用したという判断があったと考えられる。

 今後新しい無線LAN規格が増えるたびに、Wi-Fiの呼称も増える。例えば標準化の作業が進行中の次世代規格「IEEE 802.11be」は、「Wi-Fi 7」になる。同様にWi-Fi Allianceは、「IEEE 802.11ac」を「Wi-Fi 5」と呼称するなど、過去の規格にも一部で適用している。


 次回(第6回)は、モバイルネットワークの進化に焦点を当てる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ 株式会社インターネットイニシアティブ

「SD-WAN」を“賢くお得に”使いこなすための徹底活用ガイド

企業のネットワークにおいて採用が広がる「SD-WAN」。賢くお得に使いこなすためには、どのような点を押さえればいいのか。SD-WAN活用に関する基礎知識と、導入事例を紹介する。

事例 NTTドコモビジネス株式会社

5つの事例に学ぶ、多店舗ビジネスにおけるネットワーク運用課題の解消方法

多店舗展開を行う企業では、ネットワークの構成や運用ルールが店舗ごとに異なるケースが多く、管理の煩雑さや故障発生時の対応遅延などの課題を抱えがちだ。このような課題の解決策を、5つの事例から探る。

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

出社したのに接続できず遅刻? インターネット回線のトラブルをなくすには

「出社しているのに業務クラウドに接続できず打刻ができない」「オンライン会議が落ちてしまう」など、インターネット回線に関するトラブルは今も後を絶たない。そこで注目したいのが、法人向けに設計された高速インターネットサービスだ。

事例 NTTドコモビジネス株式会社

通信回線の逼迫をどう乗り越えた? 建設現場におけるネットワーク最適化事例

建設現場では、データの大容量化に伴う通信回線の逼迫が業務の障壁となるケースが増えている。本資料では、ネットワークの再構築により通信環境を最適化し、意思決定の迅速化や安全対策の高度化を実現した企業の事例を紹介する。

事例 NTTドコモビジネス株式会社

OS更新時の帯域逼迫とセキュリティ課題を解消、事例に学ぶネットワーク刷新術

セキュリティ対策に不可欠なWindows Updateだが、複数店舗・拠点を構える企業では回線が逼迫する要因であり、業務の停滞につながる大きな問題だ。あるアパレル小売チェーンの事例から、ネットワークの抜本的な改善策を紹介したい。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...