LTOを軽く超えた「新型テープ」“150TB到達”の衝撃テープ市場の共存と競争【前編】

企業の保管データ量が増える傾向にある中で、あらためて注目を集めたのがテープだ。IBMが発表した新テープシステムは、「LTO」の最新世代より容量が多くなり、テープの進化を再び印象付ける形になった。

2023年11月12日 10時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

 テープが依然として進化を続けている事実を印象付けたのは、IBMが2023年8月に発表した新型テープドライブ「IBM TS1170」だ。これはテープ規格として「LTO」(リニアテープオープン)ではなく、「IBM 3592」に従ったテープカートリッジを使用する。

 IBMは1952年に「IBM 726」というテープドライブを発売した老舗のテープベンダーだ。2023年現在も企業向けにテープ製品を供給している。同社が今回発表したTS1170が採用するIBM 3592は、テープという点では同じだが、LTOとは別物になる。

「LTO」テープ超え? IBM“新型テープシステム”の正体

 IBMは、Hewlett Packard Enterprise(HPE)やQuantumと共に、LTOを策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」を構成している。

 IBMがTS1170で提供するテープカートリッジの容量は、1本当たり非圧縮時で50TB、圧縮時で150TBとなる。これはLTOの最新版「LTO-9」の容量である非圧縮時18TB、圧縮時45TBを上回るものだ。

 IBM 3592とLTOは、テープカートリッジの形状が異なる。IBM 3592のテープカートリッジは、IBMのテープライブラリ「TS4500」や、テープライブラリベンダーSpectra Logicの「TFinity ExaScale」などで利用できる。

 Spectra Logicのマット・ナインスリング氏は、企業がIBM 3592とLTOを同時に使うことはあまりないと考えている。ただし、石油・ガス、銀行といった大量のデータを扱う業界や、高性能計算(HPC)を運用する企業は、IBMが今回発表した新テープドライブに関心を示す可能性があると指摘する。

 米TechTarget傘下の調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリスト、クリストフ・バートランド氏は「IBMはテープ技術の向上に相当の投資をしている」と評価する。企業におけるデータ保管の需要が高まる中で、テープが近い将来に廃れる気配はない。特に非圧縮時の最大容量が50TBになったことについて、「長期間のデータ保管、サイバーレジリエンス(サイバー攻撃からの回復力)の向上などにおいて極めて重要だ」とバートランド氏は話す。


 後編は、IBMがLTOとIBM 3592の両方を手掛けている現状を深掘りする。

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