「NVMe」も「SAS」も、ストレージ市場で重要な役割を担い続けている。NVMeに対して新しさや性能面で見劣りするSASが、消えずに使われ続けるのはなぜなのか。その利点を探る。
SSDなどフラッシュストレージのために開発されたストレージインタフェース「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)がストレージ市場で存在感を示す中、「SAS」(Serial Attached SCSI)で接続するSSDやHDDは今後どうなるのか。
SAS接続のストレージは、NVMe接続のSSDに比べてデータ転送速度やレイテンシ(遅延時間)の短縮といった性能の面で見劣りするので、今後の市場では生き残れないという意見がある。そうした見方が出てくることは当然だ。だがSASには、「不要になる」とは言い切れない良い一面が幾つもある。
SASは、ANSI(米国国家規格協会)の諮問機関であるINCITS(情報技術規格国際委員)の「T10技術委員会」(SCSI技術委員会)が開発したストレージインタフェースであり、さまざまな関連企業が普及を支援してきた。
SASはNVMeと比べてデータ転送速度が劣るものの、“ある程度の性能”と拡張性を期待できるストレージインタフェースだ。HDDでは回転数(rpm)によって違いが出るものの、SASは最大12Gbpsのデータ転送速度を提供する。
SASを使った構成では、多数のストレージで構成する大規模ストレージアレイの構築が可能だ。1つのストレージアレイに、SAS接続のストレージ数十台分のベイ(ハードウェアを収容するための内部空間)を含めることができる。
ただしハードウェアの制約により、そのストレージアレイの性能が制限される場合がある。例えば汎用(はんよう)インタフェース「PCI Express 5.0」(PCIe 5.0)の16レーン(伝送路)のコントローラーがあるとする。これはSAS接続のストレージ単体のデータ転送速度を大幅に上回るものの、大規模なストレージアレイを構築するとなると、複数のストレージの集合的なデータ転送速度がコントローラー単体のデータ転送速度を上回り、コントローラーが性能面でのボトルネックになる可能性がある。
SAS接続のストレージには、「2.5型」と「3.5型」のフォームファクタ(形状や仕様)がある。SSDまたはHDDで利用することが可能だ。
容量の面でもSAS接続のストレージは選択肢が豊富であるため、さまざまな構成に使うことができる。例えば、SAS接続のストレージを使う場合、以下のような組み合わせ方が可能だ。
非常に大容量だがデータ読み書きは低速になるHDDを、データを長期保存するアーカイブストレージに活用することもある。
SAS接続のストレージはほとんどの場合、ホットスワップ(稼働中に交換可能なこと)ができるため、故障時の対処がしやすい。電源などの他のコンポーネントも、ホットスワップが可能な場合がある。ストレージベンダーは、ユーザー企業がストレージアレイの設定や容量のプロビジョニング、監視などをするための独自の管理ソフトウェアを提供している。
後編はNVMeが市場でどのように評価されているのかを踏まえて、NVMeとSASをどのように選択すればいいのかを解説する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
新富裕層の攻略法 「インカムリッチ」の財布のひもを緩めるマーケティングとは?
パワーカップルの出現などでこれまでとは異なる富裕層が生まれつつあります。今回の無料e...
ブラックフライデーのオンラインショッピング 日本で売り上げが大幅に増加した製品カテゴリーは?
Criteoは、日本国内のブラックフライデーのオンラインショッピングに関する分析結果を発...
Omnicomが Interpublic Groupを買収 世界最大級の広告会社が誕生へ
OmnicomがInterpublic Group(IPG)を買収する。これにより、世界最大の広告会社が誕生し...