キオクシアとの経営統合の可能性があると見られていた中、HDDとSSDの事業を分離する方針を明らかにしたWestern Digital。HDDとSSDのある特性から、分離は間違いではないという見方が出てる。背景にある違いとは。
Western Digital(ウエスタンデジタル)は、キオクシアと共同で開発する3次元(3D)構造のNAND型フラッシュメモリを含め、近年はSSDとHDDの両ストレージ分野に注力してきたベンダーだ。SSDとHDDを組み合わせる新技術の開発でも話題を呼んでいた。
そのWestern Digitalが、キオクシアとの経営統合に向けた協議が進んでいると見られていた2023年10月に、HDDとSSDの事業を分社化する方針を明らかにした。その理由の一つは、アクティビスト(物言う株主)として知られる投資会社Elliott Investment Managementからの“圧力”によるものだと考えられる。
だがHDDとSSDの分離は、専門的な視点で見て理にかなっており、顧客やベンダーにとって必ずしもマイナスにならない――という意見が出ている。その見方の背景にあるのは、HDDとSSDに違いをもたらしている“ある特性”だ。どういうことなのか。
HDDは、回転する磁気ディスク「プラッタ」を記録媒体として内部に搭載する。それに対してSSDは、記録媒体としてNAND型フラッシュメモリを搭載する。Western Digitalが開発したように、HDDにNAND型フラシュメモリを組み合わせる製品は存在するものの、HDDとSSDは技術的には異なるものだ。調査会社NAND Researchのアナリスト兼創設パートナーのスティーブ・マクダウェル氏は「分社化は技術面で理にかなっている」と語る。
市場の観点でも「HDDとSSDにはかなりの違いがある」とマクダウェル氏は話す。ストレージ市場という区分で見れば両者には重なる部分はあるが、以下のような市場特性が、HDDとSSDに大きな違いをもたらすと同氏は指摘する。
Western DigitalのHDDとSSDの事業が分かれたとしても、「顧客にはほとんど影響がない」とマクダウェル氏は見ている。調査会社Objective Analysisでゼネラルディレクター兼半導体アナリストを務めるジム・ハンディ氏も同様の見方をしている。「分社化によって一部製品のブランド名が変わる可能性はあるが、その他に顧客への影響はほとんどないと考えていい」。影響を受けるのは顧客よりも、従業員と投資家だ。
歴史があるWestern DigitalのHDD事業がどうなるのかが、今後の注目点の一つになる。ハンディ氏は、仮に分社化をすれば「Western Digitalは1980年代に参入したHDD事業に専念できるようになる」と話す。Western DigitalがSSDの分野に参入したのはそれよりずっと後のことだ。同社がコンシューマー向けSSDを手掛けるSanDiskを買収したのは、2015年のことだった。
Western DigitalのHDDとSSDの事業が分社化される場合、失われる可能性があるのは、同社がSanDiskの買収によって手にしたSSD分野の技術だ。SSDとHDDが1つの会社内にあることで、両分野の研究開発チームが力を合わせてストレージ共通の課題に取り組むことができる。分社化すれば、そうした共同開発はしにくくなる。
SSDとHDDの技術を組み合わせた結果、Western Digitalのストレージ新技術として生まれたのが「OptiNAND」だった。これはHDDにNAND型フラッシュメモリを搭載する技術だ。この技術の主な利点についてハンディ氏は「NAND型フラッシュメモリを一部に使用することで、HDDにおける書き込み速度が向上する」と説明する。
調査会社Futurum Groupのアナリストを務めるデイブ・ラッフォ氏は、Western DigitalがHDDとSSDの両方を販売できることは、HDD専業のベンダーSeagate Technologyよりも有利になる点だと見てきた。近年の傾向としてはHDD市場が縮小し、SSD市場が拡大する動きが顕著だからだ。
ただし必ずしも市場規模だけで見ることはできない。「Western DigitalにとってはHDDのみに注力する方が、成長できる可能性がある」とラッフォ氏は指摘する。開発と販売に資金と人材を集中的に投入できるようになるからだ。
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