COBOL誕生に“あの通信技術”まで? 女性エンジニアがつくったITの歴史STEM分野における女性活躍の現状【第3回】

企業のシステムを支えるCOBOLや通信技術が誕生した背景には、女性エンジニアたちの活躍があった。ITの常識として知っておきたい女性エンジニアを紹介する。

2024年07月12日 08時00分 公開
[David NeedleTechTarget]

関連キーワード

人事


 ITとコンピュータサイエンスの発展の歴史において、女性エンジニアは重要な役割を果たしてきた。企業のミッションクリティカルなシステムを支えるプログラミング言語「COBOL」や、広く使われているある通信の要素技術は、女性エンジニアによって生み出されたものだ。ITの常識として知っておくべき、ITと女性エンジニアの歴史を紹介する。

COBOL誕生や“あの通信技術”まで? 女性エンジニアとITの歴史

 コンピュータ分野の先駆者であるグレース・ホッパー氏は、数学博士であり、米国海軍の軍人でもあった。同氏は軍で開発プロジェクトに携わる中で、マシンに依存しない共通プログラミング言語の理論を発案。英語に近いプログラミング言語でプログラミングし、機械語に翻訳する技術「コンパイラ」を開発した。1959年にはその理論にのっとり、プログラミング言語「COBOL」を完成させた。

 女優で発明家のヘディ・ラマー氏は1942年、無線信号を送信する技術「周波数ホッピング技術」の特許を取得。この技術は、当初はその価値を認められなかったものの、今では世界中の通信を支える無線LANやGPS(全地球測位システム)、近距離無線通信「Bluetooth」といった技術の基礎となっている。

 「1980年代のパーソナルコンピュータの台頭と、1990年代のインターネット時代の幕開けにより、女性はIT業界で強力な地位を獲得した」。作家のマルグリット・ジエンターラ氏は、1987年出版の著書『Women, Technology and Power: Ten Stars and the History They Made』でこう話している。

 例えば、この時代に活躍した女性として、IBMの上級職を務めたジョイス・レン氏や、会計ソフトウェアベンダーOpen Systemsの共同設立者であるアン・ウィンブラッド氏などが挙げられる。これらの女性は、所属する企業こそ違ったが、決断力や信念、パワー、苦労をいとわない姿勢といった基本的な性格は共通していたという。

 IT産業の発展に伴い、女性が活躍する機会も増える傾向にある。現代のIT業界で活躍する女性リーダーとして、以下のような人物が挙げられる。

  • OracleのCEOサフラ・キャッツ氏
  • 半導体製品ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)のCEOリサ・スー氏
  • ゲノム解析サービスベンダー23andMeの共同設立者兼CEOのアン・ウォジツキ氏
  • 23andMeの共同設立者にして生物学者のリンダ・エイヴィ氏
  • デザインツール「Canva」を提供するCanva社の共同設立者兼CEOのメラニー・パーキンス氏

“新世代のIT”をけん引する女性リーダーたち

 人材評価ツールベンダーMV Aurora(Searchlightの名称で事業展開)の共同設立者である双子のアナ・ワン氏とケリー・ワン氏も、新世代の女性ITリーダーと言える。

 ワン姉妹は、博士号を持つ両親の下、STEM教育を重視する家庭で育った。アナ氏は13歳の時に通っていた公立高校の夏期プログラムで、プログラミング言語「Java」に出会い、ITに没頭することとなる。「コンピュータサイエンスが問題を解決する方法に魅了された。その夏は、ひたすらキーボードをたたいてアルゴリズムを組んでいた」(アナ・ワン氏)

 MV Auroraが提供する人材評価ツール「Searchlight」は、バイアス(偏見)を排除したAI(人工知能)エンジンを搭載する。Searchlightは、従業員の適性やソフトスキル、仕事のスタイル、職務要件を理解する設計となっている。2024年4月、同社はITベンダーMultiverseにより買収されることを発表した。Multiverseは、Searchlightを自社サービスに統合する予定だ。

 ケリー・ワン氏は、「IT業界の女性リーダーは、多くの女性が目指すべきロールモデルとしても、メンターとしても活躍できる。活躍している女性の姿を見れば、IT業界で働こうと考える女性はますます増えるだろう」と期待を込めて話す。


 次回は、これからのIT業界で女性に求められる役割と、企業の取り組みを探る。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 アイティメディア広告企画

DevOps実践で起こり得る課題を解消し、DXを実現する方法とは?

DXを実現するためには、開発チームと運用チームのスムーズな連携が必要になる。これを実現する手法がDevOps だが、実践に当たってはいくつかの課題が存在する。本資料ではこの課題と解決策について解説する。

製品資料 株式会社SHIFT

5分で診断、正しいソフトウェアテストベンダーを選ぶための比較チェックシート

ソフトウェアテストをアウトソースするに当たってはベンダー選びが重要だが、自社に合うテストベンダーをどう選べばよいか分からない、という声もよく聞かれる。そこで、失敗しないベンダー選定の基準を、チェックシート形式で解説する。

製品資料 株式会社SHIFT

品質課題が残る我流テスト、第三者によるテストを導入したらどう変わる?

ソフトウェア開発ではテストを、開発エンジニアが自ら担当するシーンが散見される。ただ、専門知見を持たない人材が我流でテストしていては、開発品質の担保が難しくなる。この問題の解決には第三者によるテストが重要だ。

製品資料 株式会社SHIFT

課題山積のソフトウェア開発、テストを外注すべき5つの理由とは

DXの推進が叫ばれる中、その中核を担うソフトウェア開発の現場では、IT人材不足をはじめとする5つの課題が顕在化している。それらを解消し、ソフトウェアの品質を高める方法として注目されるのが、ソフトウェアテストの外注だ。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画

クラウド活用の価値最大化のために、クラウドネイティブをどう取り入れる?

クラウドサービスは今や広く普及し、クリティカルなシステム領域のクラウド移行も進んでいる。このクラウドの利点を徹底的に活用する仕組みが「クラウドネイティブ」だ。この仕組みを、企業はどう取り入れるべきなのか。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...