ネットワークにおける「QoS制御」は無線LANでも有効だ。無線LANのQoS制御はどのような効果をもたらすのか。どのような仕組みで実現するのか。基本を解説する。
ネットワークにおける「QoS制御」(QoS:Quality of Service)とは、帯域幅(回線容量)の有効利用のためにアプリケーションごとに帯域幅の利用に関する優先順位を付けることだ。遅延や輻輳(ふくそう)を許容できるアプリケーションよりも、遅延の影響を受けやすいアプリケーションの優先順位を高く設定する。これによりユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)を向上させる。
一時的に無線LANに遅延が発生した場合、Webサイトの閲覧には問題がなくても、無線LANを介して音声通話をする「Voice over Wireless LAN」には支障が出ることがある。こうした事態を避けるには、無線LANにおけるQoS制御が不可欠だ。本稿は無線LANのQoS制御の基本を紹介する。
無線LANでQoS制御を機能させるには、クライアントデバイス、無線LANアクセスポイント、アプリケーションの3つが、QoS制御の設定を適切に認識する必要がある。無線LANのQoS制御規格として「IEEE 802.11e」が知られている。これは無線LANの業界団体Wi-Fi Allianceによる名称では「Wi-Fi Multimedia」(WMM)と呼ばれ、無線LANアクセスポイントや無線LANルーターなどの無線LAN機器に一般的に実装されている。WMMはアプリケーションのトラフィックを「音声」「動画」「ベストエフォート」「バックグラウンド」の4つに分類し、優先順位を付けて制御する。
ベンダー各社は、それぞれの仕様で帯域幅利用の優先制御をする方法を提供している。基本的な仕組みはほぼ共通だが、製品によって用語が異なる。Cisco Systemsの無線LAN機器は、図のようにQoS制御の設定を「Platinum」「Gold」「Silver」「Bronze」の4つに分類している。他のベンダーの無線LAN機器の場合は、単に「音声」「動画」「ベストエフォート」「バックグラウンド」と分類していることもある。
無線LAN機器のQoS制御では、基本的には無線LANアクセスポイントの識別名である「SSID」(サービスセット識別子)に応じて、優先順位の設定をネットワークに割り当てる。無線LANクライアントデバイスごと、アプリケーションごとのQoS制御設定を適用することもできる。
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