Carbon Lighthouseは建物にセンサーを取り付けて空調や電源の利用状況を分析し、それらの使い方を最適化することで光熱費削減につなげている。どのような仕組みなのか。同社の取り組みを説明する。
米ロサンゼルスに拠点を置くCarbon Lighthouseは、商工業ビルからの二酸化炭素排出量を削減する事業を手掛けている。同社の事業で重要な役割を果たすのは、Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービス群で構築した「CLUES」(Carbon Lighthouse Unified Engineering System)というデータ分析システムだ。顧客企業の施設に取り付けたセンサーから得たデータを基に、エネルギー効率の良い機械や設備の利用方法をリアルタイムで提案する。前編「約300億円の光熱費を削減 AWS活用企業の『データ駆動型省エネ策』とは?」と中編「省エネ企業が『AWS』で構築した光熱費削減システム 気になるその中身とは?」に続く本稿は、Carbon Lighthouseが進める顧客企業の光熱費削減と、二酸化炭素の排出量削減への取り組みを説明する。
Carbon Lighthouseが契約している、ある顧客企業は、米ロサンゼルスにオフィスビルを所有している。40万平方フィート(約3万7200平方メートル)のこのビルのエネルギー効率は既に高かった。ビルの冷暖房システムは、大型ファンと冷温水のコイルの付いた空気調和機を備えている。ビルを冷却するときは、冷水をコイルに流し、そこにファンで空気を送る。暖めるときは、温水をコイルに流し、そこにファンで空気を送る仕組みだ。
そのビルにCarbon Lighthouseはセンサーを取り付けた。その後、ビル内の70基の空気調和機と地下のボイラー冷却機、屋上の冷却塔から取得したデータをCLUESで処理し、冷暖房システムに情報を提供した。
ビルの冷暖房システムとCLUESの洞察を組み合わせることで、必要最低限のエネルギーを使って快適な温度を維持するために、稼働すべき空気調和機の数と停止すべき空気調和機の数をリアルタイムで調整できる。「こうした絶え間のない調整とチューニングによって、建物のエネルギー効率が最大限に高められる」とミルスタイン氏は話す。結果的にこの顧客企業は年間約20万ドルの光熱費を節約した。これはこのビルの光熱費の約25%に当たる。この金額を節約できたことで、ビルの資産価値は350万ドル(約3億8000万円)増加したという。
この顧客企業は所有する別のビルにもCarbon Lighthouseの技術を組み込んだ。その結果、合計7900トンの二酸化炭素排出量の削減につながった。
Carbon Lighthouseはデータ分析技術を使い、自社の事業の効率も上げている。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって事業モデルの調整を余儀なくされた。ただし2021年に入ってからの二酸化炭素排出量の削減ペースは、2020年を上回るとミルスタイン氏は語る。
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