企業のデータ保管量が増大するのと同時に、HDDに求められるスペックが高まっている。Western DigitalのOptiNAND搭載のHDD新モデルには、需要に応じるための2つの重要な進化がある。それは何なのか。
企業が扱うデータ容量が増大する傾向にあることを前提にすると、HDDに求められる進化の方向性は大きく分けて2つある。データの読み書きをより高速にすることと、より大容量を保管しやすくすることだ。主要HDDベンダーであるWestern Digitalは、2023年に入ってHDD新モデルの情報をWebサイトでひっそりと公開した。そのやり方は控えめだったが、このHDDには2つの重要な進化があった。
Western Digitalがこっそり情報を公開したデータセンター向けHDDの「Ultrastar DC HS760」(写真)。このHDDには、20TBの大容量を実現した点以外に、特筆すべきことが2つある。
1つ目は磁気ヘッドを制御するアクチュエーターを2つ搭載する「デュアルアクチュエーター」の設計を採用したことだ。デュアルアクチュエーターの採用は、Western Digitalにとっては新しい取り組みになる。Ultrastar DC HS760の前世代のモデルである「Ultrastar DC HC560」は、アクチュエーターを1つ搭載する「シングルアクチュエーター」を採用していた。
デュアルアクチュエーターは2つの独立したアクチュエーターがデータの読み書きを同時に実施するため、シングルアクチュエーターよりもデータの読み書きが速くなる利点が見込める。同社の公式Webページによれば、連続したデータを読み書きするシーケンシャルアクセスの読み書きは、デュアルアクチュエーターになることで最大2倍になる。
Ultrastar DC HS760について特筆すべき2つ目は、Ultrastar DC HC560と同様に、面密度(データ保存用の円盤「プラッタ」におけるデータの記録密度)で、プラッタ当たり2.2TBを確保していることだ。この面密度実現には、Western Digitalが2021年に公開した技術「OptiNAND」が貢献している。
OptiNANDは、Western DigitalのNAND型フラッシュメモリ「iNAND」をHDDに組み合わせる設計が特徴的だ。「OptiNANDはiNANDを有効に使うことで、面密度を高める際の懸念となる『データ読み書き時のエラー』の発生率を低減させている」。調査会社IDCのアナリストであるエド・バーンズ氏はそう説明する。
トラック(プラッタを同心円状に分割した記録領域)をより近接させて配置することで、OptiNANDを採用したHDDはプラッタ当たりの容量を増大させることができる。バーンズ氏は「隣接するトラック同士の干渉を回避するのにiNANDが役立ち、それが面密度の向上に貢献している」と評価する。
調査会社Coughlin Associatesのプレジデント、トム・カフリン氏は、OptiNANDが貢献するのは大容量化だけではないとみる。「HDD内蔵のiNANDは、メタデータ(データ管理のためのデータ)を保存することでデータへのアクセス速度を向上させると同時に、プラッタの保存容量に余裕を持たせることにつながっている」(カフリン氏)
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