企業がNaaSを利用するとネットワークインフラの所有者はNaaSベンダーになる。そのため、自身ではネットワークを変更できないという懸念がある。だがこれは誤解だ。
「NaaS」(Network as a Service)では、企業はネットワークインフラをサブスクリプション形式で利用することになる。基本的にネットワークインフラを所有するのはNaaSベンダーだ。ITコンサルティング企業Grundemann Technology Solutionsのマネージングディレクターであるクリス・グルンデマン氏は、これを「所有するネットワークからアクセスするネットワークへの移行」と表現する。ただしこれは、ネットワークに変更を加えるときを含めて、NaaSベンダーへの全面的な依存を意味するものではない。それはなぜか。
NaaSを導入することがベンダーに依存することにはならないのは、NaaSにはユーザー企業が自身で設定を変更するための「セルフサービス機能」が搭載されているからだ。企業はネットワークインフラを自社で所有してなくても、このセルフサービス機能によってNaaSのネットワークに変更を加えることができる。
「ネットワークの専門知識があれば、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)でボタンをクリックするだけで、オーケストレーション(デプロイや管理の自動化)や帯域幅の変更などを自社で管理できる」。NaaSベンダーPacketFabricの市場調査・分析担当シニアディレクターであるケン・グレー氏はそう説明する。
グルンデマン氏によれば、セルフサービス機能はNaaSに欠かせない要素であり、もしなければMSP(マネージドサービスプロバイダー)が手掛ける従来のマネージドサービスと変わりがなくなってしまう。「セルフサービス機能はユーザー企業とベンダー、双方にとってメリットがある。なぜなら、ユーザー企業は自社でネットワーク機能を向上させることができ、NaaSベンダーは管理や運用のコストを削減できるからだ」(グルンデマン氏)
企業がNaaS導入に関心を寄せる背景には、幾つかの要因がある。グレー氏によると、NaaSは企業が望むアジリティー(俊敏性)やSLA(サービスレベル契約)をもたらすからだ。
グルンデマン氏は、企業ネットワークがより広範なエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)に変化してきていることも要因だと指摘する。企業ネットワークは、もはや1つの企業内における複数のLANやWANの集合体ではない。「現在の企業ネットワークは複数のデータセンターやパートナー企業のネットワーク、アプリケーション、クラウドサービス、その他の分散システムに接続している」(同氏)。NaaSは、その複雑な接続の仕組みを簡素化する。
2024年はNaaSの導入が進むと見込まれる。しかし、ネットワークの他のトレンドと同様、完全な移行はすぐには起きないだろう。一部の企業はオンプレミスのシステムをクラウドサービスに移行する段階にあり、これに時間を費やすことになる。
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