SSD、HDDの違いが消える 「HDD不要論」は“ガセ”じゃなかった?駆逐するSSD、生き残るHDD【第1回】

「SSD」と「HDD」の違いは徐々に消えつつある。それはHDDが終焉(しゅうえん)を迎えることを意味するのか。「企業向けストレージの今」を探る。

2024年02月21日 05時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 「SSD」はデータ読み書きのパフォーマンスに高速性が求められる用途向け、コストを比較的安価に抑えるのであれば「HDD」――。以前はこれが自然な考え方だった。

 SSDを含むフラッシュストレージの用途が広がるのと同時に、HDDを代替するSSD“新技術”の開発が進み、以前の常識は崩れつつある。そこで改めて、SSDを含むフラッシュストレージがHDDに近づく現状と、「HDD不要論」の今を考える。

「SSD」と「HDD」の違いがなくなり、HDDが消える?

 SSDが新たに進出したのは、従来は“ニアライン”のHDDが担っていた分野だ。ニアラインとは、利用頻度が高いデータを扱う“オンライン”と、データの長期保存を目的とする“オフライン”のストレージの、中間的な役割を指す。この分野でSSDを利用することが現実的な選択肢になったのは、1つのメモリセル(データを記録するメモリ素子)に4bitを格納する記録方式「クアッドレベルセル」(QLC)を採用するフラッシュストレージが出てきたからだ。

 1つのメモリセルに1bitや2bit、3bitを格納する記録方式よりも、QLCの記録密度は向上する。こうした記録密度の向上によって、1GB当たりの単価は下がる傾向にある。

 SSDの1GB当たりの価格は、HDDの水準に近づいてきている。こうした市場の変化やSSDの技術進化を受け、フラッシュストレージの熱心な支持者たちは、「HDDの終焉(しゅうえん)」が訪れると同時に、SSDのみを使う「オールフラッシュデータセンター」が実現するときがやって来ると考えている。

「企業向けストレージの今」を理解するための要素

 今後の企業向けストレージを考えるに当たっては、技術進化や、SSDとHDDの違いなどさまざまな点を考慮する必要がある。QLCと「トリプルレベルセル」(TLC)もその一つだ。QLCは前述の説明の通りで、TLCは1つのメモリセルに3bitを格納する記録方式を指す。

 本連載では、「企業向けフラッシュストレージ(またはエンタープライズフラッシュストレージ)の今」をしっかり理解してもらうために、幾つか重要な点を解説する。鍵になるのは以下の内容だ。

  • TLCとQLC
  • ストレージプロトコル「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)
  • SSDとHDDの長所と短所
  • SSDとHDDのコスト、パフォーマンスの違い
  • クラウドサービスにおけるSSDとHDD
  • オールフラッシュデータセンター

企業向けフラッシュストレージとは

 話を進めるに当たって注意が必要なのは、フラッシュストレージという用語の意味が、使う場面によって異なってしまうことがよくある点だ。まずは、企業向けフラッシュストレージを定義するところから始めよう。

 企業向けフラッシュストレージは、以下のような物理的な特徴を持ったデータセンター用ストレージシステムを指す。

  • フォームファクター(大きさや形状の仕様)として、サーバラックに積み上げる形式の「ラックマウント型」を採用
  • 複数のSSDを搭載するストレージアレイの構成
  • 比較的大容量のSSDを搭載

 通常、企業向けフラッシュストレージでは、ストレージコントローラーがデータへのアクセスを制御する。ストレージコントローラーはその他、以下の役割も担う。

  • I/O(データの入出力)の処理
  • データの配置
    • どのSSDにどのデータを配置するかに関する割り当て
  • ウェアレベリング
    • データの書き換えを各ブロック(データの記録領域をまとめた単位)に分散させる
  • ガベージコレクション
    • 不要なデータを削除して空き容量を増やす

 企業向けフラッシュストレージの容量は、数十TBから数PBに及ぶことが少なくない。データの保存形式は「ブロック」「ファイル」「オブジェクト」のいずれかだ。これはHDDベースのストレージアレイと変わらない。


 次回は、企業向けフラッシュストレージをより深く理解するための要素として、QLCを解説する。

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