AWSやAzureの「ベンダー認定資格」が昔ほど評価されない理由エンジニア向けのクラウド認定資格【中編】

クラウドサービスやクラウドコンピューティングに関連する認定資格には幾つもの選択肢がある。変化が激しいこの分野で、どのように認定資格と向き合うべきか。

2024年07月17日 09時30分 公開
[Brian KirschTechTarget]

 クラウドコンピューティングの市場は拡大しており、変化が激しい分野だ。そうした中で、クラウドコンピューティングに精通していることを証明する認定資格は人気であり続けると考えられる。

 クラウドコンピューティング関連の資格にはさまざまなものがある。どの資格を取ればよいのか。「ベンダー認定資格の価値が下がっている」という指摘も踏まえて解説する。

AWSやAzureの「認定資格」が評価されなくなってきた理由

 クラウドサービス群の「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」には、複数のレベルの認定資格がある。基本の試験から始まり、アソシエイトおよびプロフェッショナルレベルに進む。

 AWSの認定資格を有しているエンジニアは、AWSを利用する企業にとっては理想的だが、企業が「Microsoft Azure」を使用している場合は、AWSの認定資格が生きるとは限らない。その逆も然りだ。基本的な考え方の一部は共通しているが、ダッシュボードやインタフェース、機能が違う。異なるクラウドサービス群を利用する企業にとっては魅力的ではないだろう。

 ベンダーの認定資格はさまざまなベンダーがクラウドサービス市場に参入した結果、過去にあったほどの影響力はなくなっている。

 例えば仮想化ソフトウェアベンダーVMware(2023年11月にBroadcomが買収)の認定資格は数年前はとても価値があった。仮想化ソフトウェアに関するベンダー資格でVMwareほど有望なものは他になかったと言っても過言ではなかったからだ。しかし市場が変わって他の製品が登場したため、2024年現在ではそうではない。今日、VMwareの認定資格に価値がなくなったわけではないが、企業が採用している製品によって価値が変わる。クラウドサービスも同じだ。

マルチクラウドのアプローチを取る

 認定資格に関する典型的な考え方は、高いレベルの資格を取得した人ほど、より価値のある人的リソースになるというものだった。しかし、クラウドコンピューティングの世界では事情が異なる。今ではさまざまな企業が複数のクラウドサービスを利用する「マルチクラウド」戦略を取っている。もはやIT業界において一つのベンダーだけに依存することはなく、それが資格取得の方法に影響を及ぼしている。

 例えば、企業が全ての自社アプリケーションをAWSで開発していても、Microsoftのサブスクリプションサービス「Microsoft 365」を利用するためにMicrosoft Azureを利用している場合がある。AWSの認定資格しか持っていなければ、実際のビジネスニーズに沿った業務ができないことになる。

 エキスパートレベルの認定資格は過去には理想の資格だったとしても、今では状況が変わった。クラウドコンピューティングのスキルを高めるためのアプローチを再考した方が適切な選択になる可能性がある。

 単一のベンダーの認定試験をマスターするためにトレーニングを受けるのではなく、複数のベンダーの低レベルの認定資格を検討しよう。Microsoft Azureのエキスパート試験に合格すれば技術力があることのアピールになるが、それと同様にMicrosoft Azure、AWS、「Google Cloud」のアソシエイトレベルの認定資格を取得することにも価値がある。所有する資格の多様性によって、学習能力を示すことができるだろう。クラウドコンピューティングの変化のスピードを考えると、複数の資格を取得していることで企業から好印象を持たれるはずだ。

 このマルチクラウドアプローチの欠点は、3種類の認定資格を維持する必要があることだ。それぞれ異なる時期に更新され、試験費用がかかる。それでも、複数の認定資格を持つことの影響は過小評価できない。現在のチームや雇用主が3つのクラウドサービスのうちの一つを使用していなくても、次の仕事先が使用している可能性がある。実際、それがその仕事先で働く動機になることも考えられる。自分の認定資格を企業のニーズに適合させるという視点が重要だ。


 次回は、ベンダー認定資格以外にどのような認定資格の取得を検討すればよいのかを解説する。

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