スマートフォン管理市場、次の買収先としてうわさされる意外な会社残るは数社か

市場の統合に伴うリスクを考慮しつつ、各製品が提供する新技術を吟味する。それが、変動必至の2014年のエンタープライズモバイル管理市場に対して、企業のIT担当者が取るべきスタンスだ。

2014年02月18日 08時00分 公開
[Jake O'Donnell,TechTarget]

 エンタープライズ市場において、エンタープライズモビリティやITのコンシューマライゼーション、私物端末の業務利用(BYOD)のトレンドがますます広がっている。こうした中、2014年のエンタープライズモバイル管理(EMM)は、さらなる「技術の進歩」と「統合・買収」を軸にしたストーリーが展開されると、アナリストや業界ベンダーは見ている。

 米VDC Research Groupのシニアモバイルアナリスト、エリック・クライン氏は、「EMMは、ベンダーが創造性を発揮して機能の幅を広げなければならない段階に来ている」と指摘する。

 米AirWatchや米MobileIronなどのEMMベンダーが強化を図ることができるのは、モバイルアプリケーション管理(MAM)とモバイルコンテンツ管理(MCM)の2分野だ。

 「モバイルアプリ管理の買収ターゲットは現在、米Apperianしかない。Apperianは最近ではMAM分野で最も成功した企業だといえる。一方、コンテンツ管理に関しては、AirWatchやMobileIronよりも優れた機能を提供している興味深い新興企業が幾つかある」と、クライン氏は語る。

 現在のEMMでは、動画や音声対応が不十分だといえるが、実際に強化されるかどうかは「カスタマーテストや需要により決まるだろう」とクライン氏は見ている。

 「どのEMMベンダーが生き残るのか? それが2014年の話題になる」と話すのは、米451 Researchのモバイルアナリスト兼リサーチディレクターのクリス・ヘイゼルトン氏だ。

 「EMMから撤退するか、事業規模を縮小するベンダーが出てくる可能性がある」と、ヘイゼルトン氏は語る。「それは、ポートフォリオの一部として、または包括的なデバイス管理製品やサービスのコンポーネントとして、EMMを提供しているベンダーだ」(同氏)

 2013年11月に米Fiberlink Communicationsが米IBMに買収され、2014年1月にはAirWatchが米VMwareに買収されたことで、大企業に吸収されていない大規模EMMベンダーはMobileIron程度になった。

EMM買収を狙っているのは?

 EMMベンダーを狙っていると思われる企業の数は減ってきている。IBMのFiberlink買収やVMwareのAirWatch買収の他に、米Oracleは米Bitzer Mobileを買収し、米Citrix Systemsは米Zenpriseを買収している。独SAPは米Sybaseを傘下に収め、米Wavelinkは米LANDesk Softwareに買われた。また、米Microsoftと米Dellは、独自のEMM製品を最近発表している。

 前出VDC Research Groupのクライン氏によると、米BMC SoftwareがEMMベンダーを買収する可能性があるという。

 MobileIronや米Good Technologyなどの他に、クライン氏とヘイゼルトン氏は米BoxToneやカナダのSotiといった、より規模の小さいプレーヤーを買収ターゲットとして挙げている。クライン氏は、「これらのベンダーは、目を付けられているのは確かだ。常々誘いがかかっていると思う」と話す。「高く売ろうと粘っているが、いつまで粘っていられるかは分からない」(同氏)

 MobileIronは身売りしない意向を示している。一方、Good Technologyは、将来の(買収・提携)機会について「絶対にないとは言わない」とCEOのクリスティ・ワイアット氏は述べている。

AirWatchとGood Technologyの新しいEMMおよびMDM機能

 AirWatchは2014年1月、モバイル電子メール管理(MEM)製品のコンポーネントとして、コンテナ化されたメールクライアントの「AirWatch Inbox」を発表した。これはスタンドアロンアプリケーションとしても、AirWatchのEMM製品の一部として使用することもできる。

 AirWatchのシニアプロダクションエンジニアを務めるブレイク・ブラノン氏は、「(AirWatch Inboxは)Good Technologyの同種の製品やBlackBerryと違い、経由しなければならないネットワークオペレーションセンター(NOC)がない。AirWatch Inboxは、各種スマートフォンの標準のメールクライアントと同じ操作性で、今の時代のメール操作に即した設計になっている」と説明する。

 一方、Good Technologyは最近、EMMスイート「Good Collaboration Suite」などのアップデートを公開し、企業内アプリケーションとの連係を支援するツール群「Good Dynamics Secure Mobility Platform」についても新しい導入オプションを設けた。

 Good Collaboration Suiteは、基本コンポーネントであるモバイルデバイス管理(MDM)製品の「Good for Enterprise」に新しいカレンダー機能を追加した他、ファイルサーバアクセスツール「Good Share」、インスタントメッセンジャーの「Good Connect」を含む。

 新しい導入オプション「Good Dynamics Direct Connect」は、同社のNOC「Good Dynamics Network Operations Center」を経由せずに安全な接続を確立し、モバイル端末と企業LAN間でのデータ送受信を可能にする。認証はNOCで処理することに変わりはないが、データは企業システムと端末間をダイレクトに行き交う。

 「Enterprise Single Sign-On」のシングルサインオン(SSO)機能は、Good Technologyのアプリにログインするだけで、会社のファイアウォール内にあるデータへアクセスできる。ユーザーのモバイル端末で社内システムへのログイン情報を入力する必要はない。

 約4800台もの私物端末向けネットワークを管理している、あるITプロフェッショナルは、「自社の安全なイントラネットアクセスを確保する上でSSOは有効だ」と語る。

 モバイル管理にGood Technologyの製品を6年間利用している米Union Bankでコラボレーションおよびモバイル担当マネジャーを務めるスティーブ・チョン氏は、「送信するファイルに、サードパーティーの保護が付くのは重要な機能だ」と述べる。

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