「5G」が高速なデータ伝送によって「AI」技術の活用を広げるだけではなく、AI技術が5Gを進化させる可能性もある。両者は相互作用する関係にあるということだ。この関係性がもたらし得る進化とは。
2020年現在、「5G」(第5世代移動通信システム)を利用できるのは世界のごく一部の地域に限られている。一方で機械学習などのAI(人工知能)技術は、より広く活用が進んでいる。現時点で発展段階は異なるものの、アナリストは両者が相互作用によって発展するようになると予測する。
AIモデルのトレーニングには大量のデータを使用する。高速なデータ伝送が可能な5Gを使用すれば、大規模なトレーニング用の教師データを送信することも容易だ。そのため5Gの普及によって機械学習やデータ分析のアプリケーションがさらに進化し、より広く活用される可能性がある。
5Gには低レイテンシ(低遅延)、高速なデータ伝送、多数同時接続という特徴がある。「多種多様なコネクテッドデバイス(ネットワークに接続したデバイス)の活用が可能になり、それによってAI技術の活用がさらに進む」と、コンサルティング会社Deloitteのメディア&テレコミュニケーション部門でエグゼクティブディレクターを務めるジェフ・ルークス氏は語る。
「AIモデルの開発や運用は、5Gによるデータ伝送の高速化で改良される」というのが専門家の見方だ。5Gは数Gbps規模のデータ伝送速度があり、遅延は10ミリ秒以下に抑えられる。「データ伝送の信頼性は大きく向上する」と、Deloitteのメディア&テレコミュニケーション部門でプリンシパルを務めるジャック・フリッツ氏は説明する。
5GがAI技術を進化させるだけでなく、AI技術が5Gを進化させる可能性もある。5Gのルーティングや負荷分散にAI技術が役立つからだ。「AI技術を活用することで、5Gのパフォーマンス向上や構築が容易になる」とルークス氏は語る。
ただし5Gは登場して間もないため、2020年時点ではまだ5Gの機能や性能の理解が広がり始めたところだ。「5Gが実現する機能が一般的に利用可能なほど本格的には活用されていない」とビーラー氏は説明する。
5GとAI技術は、主にネットワークのエッジ(データを生み出すデバイスがネットワークに接続するポイント)で相互に作用する。「そこでは5Gによる高速な接続とAI技術が相互に作用し合う」とルークス氏は語る。
デバイスがネットワークに接続するポイントで、AI技術を活用してデータ処理やデータ分析を実施するこうした仕組みを「インテリジェントエッジ」と呼ぶ動きがある。インテリジェントエッジでは、データを生み出すデバイスがネットワーク全体に分散している。各デバイスは5Gの接続とAI技術をベースにしたデータ処理を活用して、自律的かつ効率的に稼働する。「AI技術はデバイスが最大のパフォーマンスで稼働することに役立つ。ネットワーク管理やネットワークの設計、構築においても重要な役割を果たす」(フリッツ氏)
5GとAI技術を組み合わせることで、さまざまな用途が実現したり、既存のプロセスやシステムの効率性が高まったりする可能性がある。「過去には不可能だったことが可能になる」とビーラー氏は指摘し、例えば港湾の運営を効率化する「スマートポート」や、製造ラインの完全な自動化が実現するとみる。
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