「クラウドRPA」がすぐには売れない理由クラウドRPAを取り巻く業界動向【中編】

ユーザー企業の間でクラウドサービスへのシステム移行が加速する中、クラウドRPAの導入が進まない。「オンプレミスRPA以外は選ばない」というニーズも根強い。この理由を、専門家はどう見るか。

2022年03月31日 05時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

 調査会社Gartnerのアナリストであるアーサー・ビラ氏によると、昔は「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)と言えばオンプレミスインフラで稼働するRPA(以下、オンプレミスRPA)しか選択肢がなく、近年までオンプレミスRPAが主流だった。ユーザー企業の間でクラウドサービス移行ブームが続く中でも、クラウドサービス形式のRPA(以下、クラウドRPA)の普及は遅れたとビラ氏は主張。「その理由の大半は、RPAの仕組みと機能に関係している」と話す。

だから「クラウドRPA」は普及しない

会員登録(無料)が必要です

 RPAは、人間とソフトウェアのやりとりを模倣する「ソフトウェアロボット」(bot)を作成する。botの基本機能は、判断や複雑な思考を必要としない大量の反復作業を実行することだ。端的に言うと、RPAはデスクトップレベルの自動化を目的とする。「オンプレミスRPAは、このように自動化した操作をほぼ常時実行している」とビラ氏は説明する。

 ユーザー企業がRPAを利用した当初の理由は、デジタル化によって得られるメリットを迅速に享受するためだった。この目的のためにオンプレミスRPAを利用するユーザー企業は今でもある。クラウドサービスとの連携が困難なレガシーシステムを何とかするために、オンプレミスRPAを使うユーザー企業は珍しくない。

 オンプレミスRPAのユーザー企業は、総じてオンプレミスRPAに満足している。ITコンサルティング企業ServerCentral(Deftの名称で事業展開)で業務執行役員とソリューション最高責任者を務めるエリック・ディノウスキー氏は「オンプレミスRPAのユーザー企業がクラウドRPAへの移行を決断するには、何らかの大きな理由が必要になる」と語る。

 「遅延を最小限に抑え、望ましいセキュリティレベルを維持するためには、オンプレミスRPAでなければならない」と考えるユーザー企業のリーダーは少なくないと、複数の専門家は指摘する。コンサルティング企業Guidehouseでインテリジェントオートメーションプラクティスリードを務めるランヤ・サルース氏によると、セキュリティポリシーを自社で制御することにこだわるユーザー企業は、プライベートクラウド(リソース専有型クラウドインフラ)にRPAを導入することはあっても、クラウドサービスであるクラウドRPAを導入することはまれだった。

 プライベートクラウドなら、ユーザー企業はRPAの構成と設定をコントロールできる。「こうした自由度を手放したくないとユーザー企業は考えている」と、サルース氏は考察する。同氏の推測によれば、Guidehouseの顧客の約80%が従来型のオンプレミスインフラかプライベートクラウドでRPAを運用している。「クラウドRPAを実際に使用している顧客はごく少数だ」(同氏)


 こうした中でも、クラウドRPAに需要がシフトしつつあるとの見方がある。後編はクラウドRPAのトレンドと今後の展望を解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社クレオ

新規システムへの投資が進まない? その理由と既存システムを効率化する方法

基幹システムをはじめ営業管理や購買・調達など、今日のビジネスにはITが不可欠であり、運用担当の業務改善は企業の強化に直結する。可視化や一元管理などITシステム運用全般の継続的改善を実現するソリューションに注目したい。

製品資料 株式会社シーエーシー

情シスの負担を解消してDXを加速、「外注」を効果的に活用するための秘訣

業務の効率化だけではなく、付加価値の創出などさまざまな成果を期待されている情報システム部門。しかし、アプリケーションやインフラの管理にリソースが取られ、ビジネス変革に取り組めていないのが実情だ。この課題を解消する方法とは?

製品資料 TDCソフト株式会社

たった一週間でDXを加速 「ServiceNow導入・活用」徹底ガイド

デジタル化における部分最適の課題を解消し、全体最適を実現する次世代プラットフォーム「ServiceNow」。その特徴や導入事例とともに、スピーディーかつ低コストで業務効率化を実現できる導入テンプレート製品を紹介する。

製品レビュー TDCソフト株式会社

リソースや人材が不足する企業が「ServiceNow」を楽に導入・運用する方法とは

デジタル化が加速する中で、システムのサイロ化に課題を抱えている企業も多い。こうした状況を解消するために、あらゆるシステムや業務をつなぐ管理基盤の導入が注目されているが、リソースや人材が不足する中でどう進めればよいのか。

製品資料 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

ビジネス価値の測定にFinOpsを活用、クラウド変革で得られる5つのベネフィット

企業のクラウド移行が進む一方、「クラウド化によってどれだけの効果が得られたのか」といった疑問は拭えない。この疑問を解消する鍵は「FinOps」の確立だ。本資料では、FinOpsに基づき、クラウド活用による5つの利点について解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。