スマートフォンの急速な普及で枯渇問題が話題になったIPアドレス「IPv4」。実は、日頃のネットワークトラブルの原因がこの問題であることがある。その解決策とは何か。
ネットワークのトラブルはさまざまな原因が考えられる。原因と解決法を知っていれば、トラブルシューティングができる。第2回「リソース使用率が高いのはウイルス感染のサイン? ネットワーク快適利用法」は「CPUの過度の使用」と「DNS照合速度の低下」を取り上げた。第3回となる本稿は、「静的IPアドレスの重複」と「IPアドレスの枯渇(こかつ)」に焦点を当てる。
ネットワークでは、2つのシステムが同じIPアドレスを持つことはできない。IPアドレスが重複すると、どちらのシステムもネットワークにアクセスできなくなる。大半のネットワークデバイスは、ローカルネットワークでシステムが起動されるときに、通信プロトコル「DHCP」(Dynamic Host Configuration Protocol)によってIPアドレスが割り当てられる。DHCPサーバは、ローカルネットワークで割り当てたIPアドレスを管理し、その中から各システムに異なるアドレスを割り当てる。
PCには固定IPアドレスが割り当てられることはなく、有効期限が定められたIPアドレスがDHCPによって割り当てられる。その有効期限が切れる前にシステムから再度要求すれば、通常は同じIPアドレスが割り当てられる。システムが再要求を実施せずにシャットダウンされ、有効期限が切れると、そのIPアドレスは失われ、システムの起動時に別のIPアドレスが割り当てられる可能性がある。
プリンタやWebサーバなど、IPアドレスが変わっても外部システムには影響しないネットワークデバイスには、DHCPサーバの管理者によって静的IPアドレスが割り当てられることがある。問題が起きる可能性があるのは、ユーザーが私用のWebサーバを設定し、ネットワーク管理者に知らせずに静的IPアドレスを割り当てる場合だ。企業ネットワークと家庭用ネットワークがどちらも同じDHCPサーバを共有する場合、この静的IPアドレスとDHCPサーバが割り当てるアドレスが一致すると、ネットワークに混乱が生じる。
こうした私用のWebサーバは、音楽や動画のアップロードやダウンロードに使われ、ネットワークの帯域幅(回線容量)を過度に利用することがある。
IPアドレスの供給数には限りがある。インターネットサービスプロバイダー(ISP)各社には、必要だと予測される数を基にIPアドレスが供給される。IPアドレスの中でよく知られているのが「IPv4」だ。IPv4は本来、全てのシステムに十分割り当てることができると考えられていた。スマートフォンといったモバイルデバイスの急増に伴い、一部のネットワークでは次世代IPアドレス「IPv6」への移行を余儀なくされている。
ネットワークアドレス変換(NAT)機能は、IPアドレス供給の拡張を目的に使用されている。ルーターに組み込まれるのが一般的だ。ルーターには世界中のIPアドレスの中から、1つのアドレスが割り当てられる。各ユーザー企業の社内DHCPサーバによって、システムが接続するローカルネットワーク(通常はイーサネットまたは無線LAN)のプライベートIPアドレス(社内で利用可能なIPアドレス)がそのシステムに割り当てられる。
32bit構成のIPv4アドレスを使用するネットワークでは、一般にプライベートIPアドレスは10または192.168から始まる。このプライベートIPアドレスの範囲は何度でも使用できるため、IPアドレス数の節約に役立つ。NATサーバは、インターネットと通信する場合はプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレス(社外で利用可能なIPアドレス)に変換し、インターネットからの応答時にグローバルIPアドレスをプライベートIPアドレスに変換する。
第4回は、「プリンタに接続できない」ことと「VLANとVPNの問題」を考える。
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