NVIDIAとAMDは、共にGPU分野に重点的に投資している。両社のビデオカードは、演算能力などの性能や機能においてどのような違いがあるのか。
前編「NVIDIAのビデオカード『A100 Tensor Core GPU』は何がすごい? AI向け機能も」に続いて、NVIDIAとAMD(Advanced Micro Devices)のGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)製品の違いを紹介する。
AMDは、2020年に科学技術計算などHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野を対象とするビデオカード「AMD Instinct MI100 Accelerator」(以下、Instinct MI100)を発売した。AMDはGPU製品のポートフォリオを、ゲーム向けの「RDNA」(Radeon DNA)と、データセンター向けの「CDNA」(Compute DNA)の2つのアーキテクチャに分割している。Instinct MI100は後者に入る。
Instinct MI100は120個の「コンピュートユニット」(CU)を搭載する。CUを8ブロックに分け、基板上で相互接続する。CUは「ストリーミングプロセッサ」という演算ユニットの集合体になっている。1個のCUはストリーミングプロセッサを64個搭載する。「HBM2」(HBM:High Bandwidth Memory)準拠のメモリを搭載し、メモリ容量は合計32GB、メモリ帯域幅(データ転送速度)は最大1.2TB/秒となっている。Instinct MI100のCUは、機械学習で使用する行列型のデータの処理を高速化する「Matrix Core」という機能を備える。
AMDのソフトウェア開発支援ライブラリ・ツール群「ROCm」を使うと、開発者はNVIDIAのGPUも含めて複数の環境向けのコードを記述し、コンパイル(変換)できる。「TensorFlow」や「PyTorch」など主要なオープンソースの機械学習フレームワークを利用することも可能だ。NVIDIAのGPU向けの開発環境「CUDA」のコードをAMDの製品向けに移植する方法も提供する。
NVIDIAのGPU「NVIDIA A100 Tensor Core GPU」(以下、A100)とAMDのInstinct MI100の性能を数字で比較すると、Instinct MI100が上回る。Instinct MI100のFP64(倍精度浮動小数点)の演算性能は最大11.5TFLOPS(TFLOPS:1秒間に1兆回の演算をする単位)、FP32(単精度浮動小数点)で最大23.1TFLOPSであるのに対し、A100はFP64で9.7TFLOPS、FP32で19.5TFLOPSだ。
ただしA100はAI(人工知能)技術を使ったデータ処理の高速化に優れており、Instinct MI100よりはるかに多くのメモリ容量を搭載している。調査会社Moor Insights & Strategyによると、AMDはHPCの分野ではNVIDIAの強力なライバルになるが、AI技術分野ではNVIDIAが依然として優勢だという。
ビデオカード分野にはNVIDIAとAMDの製品の他、もう一つの選択肢が加わりそうだ。Intelは開発コードネーム「Ponte Vecchio」という、同社のGPU「Xe」シリーズのアーキテクチャを採用したGPUで、汎用(はんよう)のGPU市場に進出しようとしている。Ponte VecchioはArgonne National Laboratory(アルゴンヌ国立研究所)のスーパーコンピュータ「Aurora」に採用される見込みだ。
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