ネットワークの注目すべき投資分野として、専門家は「5G」や「スマートNIC」「SD-WAN」などを挙げる。その理由を紹介する。
クラウドサービスの利用が広がる中で、専門家はネットワーク市場が縮小すると予測していた。だがネットワーク市場は利益を上げ続けている。
企業はオンプレミスのメインフレームやサーバのアプリケーションを依然として必要としている。証券会社Goldman Sachsでマネージングディレクター兼シニアエクイティアナリストを務めるロッド・ホール氏は、その点がネットワーク市場の堅調さの理由だと指摘する。スマートフォンに関連する技術や半導体の進化に起因して、一部のネットワーク市場が有望なIT投資先になっていることもネットワーク市場を支えている。
ネットワーク市場を盛り上げている要因の一つは、通信事業者やサービスプロバイダーが通信機器に投資していることだ。投資会社AO Asset Managementでプリンシパルを務めるスブ・スブラマニアン氏と、ベンチャーキャピタルLightspeed Venture Partnersの共同経営者であるグールー・チャハル氏は、共通してこの点を強調する。
投資が集中しているのは「5G」(第5世代移動通信システム)のインフラだ。AT&T、T-Mobile、Verizon Communicationsなどの通信事業者は、それぞれ独自の5Gネットワークを構築している。Verizon Communicationsはメディア部門を約50億ドルで売却すると発表した。同社がその代わりに注力するのは、5G分野への投資だ。T-Mobileは2021年に、117億~120億ドルを5G分野に投じる計画を公表している。
こうした投資計画は、今後数年にわたってネットワーク市場が成長することの前兆だとアナリストは分析する。ただしネットワーク市場をけん引するのは5Gのインフラだけではない。「データセンターをつなぐネットワークの設計方法が変化している。エッジ(デバイスの近く)での新たなネットワークの導入が増えている。これも期待を寄せる動きの一つだ」(チャハル氏)
データセンターのネットワーク領域では新たな技術が登場している。それがネットワークインタフェースカード(NIC)に高度な処理能力を持たせる「スマートNIC」だ。この市場は誕生して間もないが、特定の機能をサーバからオフロードできる魅力があり、注目すべき投資領域になりつつある。
従来のNICは、負荷分散やデータ暗号化などの機能を実装できる処理能力は備えていなかった。ネットワークのソフトウェア化が進む一方で、半導体ベンダーはNICの処理能力の向上を進めてきた。その結果、データ処理の効率性をより高めるネットワークの実現が見えてきた。こうした取り組みは、主要クラウドベンダーが長年にわたって取り組んできたことに似ていると、チャハル氏とスブラマニアン氏は指摘する。
投資銀行Cowenでマネージングディレクター兼シニアリサーチアナリストを務めるポール・シルバースタイン氏は、ネットワークがソフトウェア化する中で半導体の進歩が不可欠になると指摘する。「ネットワークは十分な処理能力がなければその価値を発揮できない」(シルバースタイン氏)
ソフトウェアでWANを制御する「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)は、商業的に成功する魅力的な技術であることが実証されつつあると専門家は指摘する。SD-WANの導入が広がっているのは、ネットワークコストの削減につながることに加えて、企業にもたらす付加価値を認識しているからだという。
前編「ネットワーク分野の投資家が語る『クラウド』の重要性と慎重論」と本稿で紹介したように、複数の専門家が注目すべきIT投資先としてクラウド、5G、スマートNIC、SD-WANを挙げている。これら以外に、専門家が挙げているIT投資先策次の通りだ。
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