プライベートネットワークとしての「5G」【後編】
「プライベート5G」「ローカル5G」の落とし穴 “超高速”は単なる理論値?
「5G」のプライベートネットワークは、過去のネットワーク技術をしのぐ性能を発揮できる可能性がある。ただし、その利点を引き出す工夫をしなければ期待外れに終わってしまう。どのような工夫が必要なのか。
中編「『プライベート5G』『ローカル5G』を構築する手段とは?」に続く本稿は、「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートネットワークとして利用する場合に知っておくべきポイントや注意すべきポイントを紹介する。5Gの利用において、パブリックネットワークではなくプライベートネットワークを利用する大きなメリットは、特定の用途に応じてパフォーマンスを最適化できる点にある。プライベートネットワークでは、ネットワークトポロジー(ネットワーク構成)をニーズに応じて制御できるからだ。
「セミプライベートネットワーク」として、「市民ブロードバンド無線サービス」(CBRS:Citizens Broadband Radio Services)に5Gの利用を広げる動きもある。CBRSとは、米国政府が持つ3.5GHzの周波数帯域(3.55GHz~3.70GHz)を解放し、民間と共用するサービスのことだ。CBRSの周波数帯域は、3つの階層に分けてアクセスの優先度が管理されている。一般的な公衆無線LANサービスよりアクセス管理は厳格だが、5Gの免許を取得して自社専用のネットワークを構築する「ローカル5G」と比べればアクセスしやすい。
CBRSは、公衆無線LANサービスよりは電波干渉が低減する見込みだ。ソフトウェアベンダーZEDEDAのエコシステム担当バイスプレジデント、ジェーソン・シェパード氏は、「CBRSはプロセス制御やロボット運用など、レイテンシ(遅延)に敏感な用途で5Gを利用する場合に適する」と話す。
5Gをプライベートネットワークとして利用するメリットの一つは、コストを抑制できる可能性があることだ。エッジコンピューティングによってデータの発生元でデータ処理をすれば、課金対象となるWAN帯域の使用を抑制できるからだ。
5Gのプライベートネットワーク導入の落とし穴
5Gのプライベートネットワークはさまざまな可能性を秘めている。ただし無線LAN技術を完全に代替することはないとシェパード氏は予測する。「結局のところ、われわれが無線LANやBluetooth、移動通信を使い分けることには理由がある。無線LANは今後も、バックオフィス業務やゲストアクセスとして広く使われるだろう」(同氏)
理論上、5Gのデータ伝送は極めて高速だが、課題が幾つかある。例えば“超高速”と表現する場合の5Gは、ミリ波のような高い周波数帯の利用を前提にしている。だがこうした高周波数帯の電波は、雨や遮蔽(しゃへい)物に弱く、電波が減衰しやすい。
デバイスへの5Gの実装方式でも問題が生じる懸念がある。「主要な無線アクセスネットワーク(RAN)機器ベンダーは、5Gによるデータ伝送のパフォーマンスと信頼性を高めるために、独自の実装方式を採用するケースが少なくない」と、ネットワーク監視ソフトウェアベンダーMantis Networks(MantisNet)のCEO、ピーター・ドーアティは指摘する。そのような実装方式の違いにより、干渉が発生する可能性がある。
干渉問題の解決に向けて、RANの標準化を目指す業界団体「O-RAN ALLIANCE」の取り組みは希望の光になる。「次世代RAN機器の機能や挙動は、共通の仕様で定義され、標準化される。機械学習などのAI(人工知能)技術を用いた高度な分析により、干渉を最小化できる可能性もある」(ドーアティ氏)
こうした干渉を避けるための取り組みが進んだとしても、完全に仕様を標準化しない限りは通信が遮断してしまう可能性は残る。ドーアティ氏は「全ての主要な機器ベンダーが協力し、業界全体のために最善を尽くすことによってのみ、5Gを使ったプライベートネットワークの可能性を引き出すことができる」と指摘する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
10
ライオンが脱レガシーシステムのパートナーに「Google Cloud」を採用した理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー