クラウドが使いたくても使えなければ「ハイブリッドクラウド」を選ぶべき理由「ハイブリッドクラウド」の8大用途【後編】

企業データはガバナンスやコンプライアンスの観点から、クラウドサービスで扱うことが難しい場合がある。このような場合に考慮すべき選択肢が「ハイブリッドクラウド」だ。それはなぜなのか。

2020年07月16日 05時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

 オンプレミスとクラウドサービスのITインフラを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」は、どのような用途に適しているのか。中編「『ハイブリッドクラウド』はなぜ必要か? DXとクラウド移行の観点で考える」「『ハイブリッドクラウド』が役に立つ理由をDRや新製品導入の観点で考える」に引き続き、ハイブリッドクラウドの主要な8つの用途のうち、残る3つを説明する。

用途6.データ活用のガバナンスと自由度の両立

 企業のオンプレミスのシステムには、コンプライアンス(法令順守)や機密性確保のために、クラウドサービスに移動できないデータもある。企業は、オンプレミスのITインフラを前提とした既存のガバナンスやリスク管理の要件を維持しながら、クラウドサービスのデータ処理ツールを利用する手段として、ハイブリッドクラウドを選択できる。

 オンプレミスのITインフラで稼働するソフトウェアを使用してデータ分析を実行してから、結果だけをクラウドサービスに送信するといった方法も、ハイブリッドクラウドの使い方の一つだ。「こうすればオンプレミスのITインフラを利用しつつ、クラウドサービスの強みを生かすことができる」と、AccentureとMicrosoftのジョイントベンチャーAvanadeでグローバルハイブリッドクラウドの責任者を務めるマイク・デルーカ氏は話す。

 課題は、オンプレミスとクラウドサービスのシステムをうまく連携させることだ。クラウドサービスにはこうした問題の解決に役立つハイブリッドクラウド管理ツールがある。Microsoftの「Azure Arc」やGoogleの「Anthos」などがその例だ。

用途7.ライセンスコストの最適化

 ハイブリッドクラウドは、オンプレミスとクラウドサービスの両方のITインフラで稼働させているソフトウェアのライセンスコストを最適化できる可能性がある。MicrosoftやOracleは、自社製品のユーザー企業を自社のクラウドサービスに誘うために、幾つかのソフトウェアでライセンス料金の割引プランを用意している。

 企業はこうした割引を考慮したライセンスコストに加え、オンプレミスとクラウドサービスのITインフラ間でやりとりするデータの送受信料金、ハイブリッドクラウドの運用に必要な人材コストのバランスを取る必要がある。こうした複数のコスト要因を計算した結果、オンプレミスのITインフラだけでソフトウェアを保持・運用するコストを上回るようなら、ハイブリッドクラウドを構築することは考え直した方がよい。

用途8.セキュリティやコンプライアンスへの対処

 セキュリティやコンプライアンスの要件が、クラウドサービスを利用するときのハードルになることがある。コンサルティング会社Deloitte Consultingで最高クラウド戦略責任者を務めるデイビッド・リンティカム氏によると、データセットごとにセキュリティやコンプライアンスの要件が異なることが少なくない。例えば法制度によってデータの保管場所が制限されていたり、クラウドサービスでは所定のセキュリティ機能や設定を利用できなかったりすることから、オンプレミスのITインフラに保持しなければならないデータもある。

 クラウドベンダーはセキュリティやコンプライアンスに関する機能を改善しており、クラウドサービスで扱えるデータの種類は広がっている。いずれにせよ大きなリスクに対処しながら、クラウドサービスのメリットを生かしたい企業にとっては「ハイブリッドクラウドが最善のITインフラになる」とリンティカム氏は話す。

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