不揮発性メモリであるOptaneが打ち出した発想から、さまざまな動きが起こった。Intelが事業の撤退を明かし、関心は次の時代へと移行する。
不揮発性メモリ(電源を失ってもデータを保持するメモリ)「Intel Optane」(以下、Optane)は、その登場から業界に大きな衝撃を与えた。Intelがこの事業からの撤退を発表しても、その存在感は消えていない。Optaneは貴重な財産を残したのだ。次の時代に影響する、遺産の一つ一つを紹介する。
Optaneを採用してきた企業は、窮地に立たされるのだろうか。Intelはフラッシュメモリのカンファレンス「Flash Memory Summit 2022」で、Optaneの既存ユーザーのサポートを引き続き提供すると発表しており、この点は問題ない。
高速ストレージとしてOptaneに依存し始めていた企業は、この先の計画を練り直さなければならない。今後のシステム設計によっては、別の製品への移行が必要になる。Optaneの代替になる可能性があるのは、不揮発性メモリをメモリモジュール「DIMM」(Dual In-line Memory Module)に搭載する規格「NVDIMM」(Non-Volatile DIMM)だ。
Optaneをストレージとしてではなく、単にメモリ容量を大きくするために使用している企業が増設や更改をする場合は、一般的にはDRAM(Dynamic RAM)を選択することになる。DRAMには、Optaneよりもコストがかかる可能性がある。
データセンターに関わる人はOptaneからさまざまなことを学んだ。Optaneが業界に残した遺産もある。次の時代のことも考えてみよう。まず、相互接続プロトコル「Compute Express Link」(CXL)は、Optaneでの利用を念頭に置いて設計された規格だ。
ストレージ業界団体「Storage Networking Industry Association」(SNIA)は、不揮発性メモリにおける読み書きの高速化を図るプログラミングモデル「Non-Volatile Memory Programming Model」(NPM)を開発した。このプログラミングモデルは、例えば不揮発性メモリの一種である「磁気抵抗メモリ」(MRAM)をキャッシュメモリに組み込んだ設計に移行する際に、恩恵をもたらすはずだ。
Optaneは、業界関係者の目をある方向へと向けさせた。読み書き速度の異なるメモリを使う際は、1990年代に広がった、システムバスに同期して動くという「SDRAM」(Synchronous DRAM)の手法だけではなく、メモリバスから最適化する手法があるということだ。
低速のコンテキストスイッチ(複数の処理をこなす際に発生する切り替え)で割り込み処理をすることが、高速と低速のメモリを扱うには不適切であるということも、Optaneが業界に教えた点だった。
メモリ業界では、読み書き速度の異なるメモリを組み合わせた設計として「NUMA」(Non-Uniform Memory Architecture)という言葉が登場した。この設計により、CXLで接続する複数のメモリが、CPUのアドレス空間(CPUからアクセス可能なメモリ領域)に共通して配置されることになる。
「相変化メモリ」(PCM)の製造やメモリのインタフェースについてIntelが学んだことは、データセンター業界のさまざまな企業の役に立つ可能性がある。少なくとも、従来のメモリ層とストレージ層の間に、新しいメモリ層を追加するという考え方に、業界関係者は前向きになっている。
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