PCの内蔵ストレージはほとんどがHDDではなくSSDになっているが、データセンターにおいても同様の変化が起きるのか。「HDDが終わりを迎える」という見方の背景にある変化とは。
ストレージ業界では「HDDが要らなくなる」という意見が目立ち始めた。低コスト化するSSDがHDDを脅かすのは、近年続いている構図ではあった。PCの内蔵ストレージに関しては、ほとんどがデータ読み書きがより高速なSSDに置き換わり、HDDはその役割のほとんどを失ってしまった。
データセンターにおいて同様の変化が起きるのどうかについては、より複眼的に見極める必要がある。ただし、「HDDが不要になる」という見方が“誇張”ではなく、現実的な問題に変わる動きが確かに起きている。
HDDは終わりを迎えるという主張の背景にあるのは、SSD1台当たりの容量増加が続いていることだ。ストレージベンダーPure Storageは、HDDの終わりを強調するベンダーの一社だ。同社が提供するSSDは、一般的なSSDよりもはるかに多くのデータを保管できることを特徴としている。同社は「2026年までに300TBのSSDを提供する」ことを公言しており、それが実現すればHDDはもはや商業的に成り立たなくなるとみている。
一方で、HDDが依然として企業のデータセンターで広く使われていることは確かだ。ストレージソフトウェアベンダーのPanasasは、特にハイパースケールデータセンター(大規模なデータセンター)ではHDDがSSDよりも多く採用される傾向にある点を指摘する。同社によれば容量単価ではHDDはSSDの5分の1ほどと依然として開きがあり、「特に大量のデータを保管するデータセンターにHDDは適している」と同社は主張する。
例えばクラウドストレージにはSSDかHDDが使われていることが一般的だ。ほとんどの場合、ユーザー企業はデータ読み書き処理のパフォーマンスやコストを基準にして利用するサービスを選択する。そのサービスに使われているストレージがSSDなのかHDDなのかについて、十分に把握していなくても大きな問題にはならない。その場合、要はクラウドベンダーが「HDDを使う方が理にかなっている」と考えれば、HDDが引き続き使われ続けることになる。
ただし、クラウドストレージにおいて利用するストレージの種別をユーザー企業が指定することは可能だ。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleといったクラウドベンダーは、ストレージとしてSSDを指定する選択肢を用意している。価格や容量、パフォーマンスなどの要件に応じて最も適したサービスを選ぶことができる。そうした要件に応じて、I/O(データの入出力)が最も多くなる傾向にあるアプリケーション用のSSD、比較的高いパフォーマンスが求められるアプリケーション用のSSD、といったように利用に適したSSDを選ぶことができる。
次回は、SSDのみを使用する「オールフラッシュデータセンター」の実現がどこまで現実的な話なのかを考える。
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