2014年のクラウドに関する記事ランキングを振り返る。1位にはIT部門の職業に関する記事がランクイン。全体傾向としては、DaaSやAWSに関する記事が多く読まれた年だった。
2014年に最も読まれたクラウドコンピューティングに関する記事は「クラウドに仕事を奪われて失業する人、しない人」でした。TechTargetジャパンはIT製品/サービスの導入、選定に関する情報を提供する媒体ですが、意外にも1位になったのは職業に関する記事。
クラウドの登場は、ハードウェアベンダーやシステムインテグレーター(SIer)のビジネス構造、そしてユーザー企業のIT導入を大きく変えました。クラウド登場以前、企業は将来を見越し十分なキャパシティーを備えたオーバースペックのハードウェアや高価なソフトウェアパッケージを購入し、多額の初期投資をすることが当たり前でした。しかし昨今、必要なときに使用した分だけを支払うクラウドサービスが、企業ITの適材適所で利用されつつあります。当然、企業のIT部門に勤めるエンジニアには、こうした変化への対応が避けられません。ハードウェアの管理が雲の中に隠れてしまうことで、従来のインフラエンジニアの仕事は大幅に簡素化されます。変わって、IT部門のエンジニアは業務に直結するアプリケーションに注力することが求められています。今後クラウド導入がますます広まれば、インフラエンジニアの仕事が変わることは十分に考えられるでしょう。
2位は「『誰の役にも立たないプライベートクラウド』はなぜ生まれるのか」という記事でした。仮想化によってITインフラを一元管理し、リソース提供を迅速かつ効率的に自動化するプライベートクラウドは、サーバ仮想化の次のステップとしてもてはやされてきました。しかし、オンプレミスの所有型プライベートクラウドは、使った分だけ支払う利用型ではないため、本質的にクラウドといえるのかという議論もあります。丸紅やHOYAのように、プライベートクラウドを構築したものの、リソースの拡張性などさまざまな点で限界を感じ、パブリッククラウドに載せ替えるという事例も出てきています。
全体の傾向では、「DaaS」(Desktops as a Service)と「Amazon Web Services」(AWS)に関する記事が多く読まれました。DaaSのサービスは日本でも2012年ごろから多数提供されています。5位に「『Amazon WorkSpaces』が再発明するかもしれないDaaSの可能性」がランクインしているように、2014年は米Amazon Web ServicesがDaaSである「Amazon WorkSpaces」を発表し話題になりました。一方、7位「Windows 7と相性が悪いDaaS、ライセンス問題の解決は可能か」にもあるように、DaaSの前に立ちはだかる課題の1つは、Windowsライセンスだといわれています。米Microsoftは、共有パブリッククラウドでWindowsを実行することを認めておらず、DaaSプロバイダーはWindows Serverライセンスを利用している状況です。Windowsラインセスの問題については今後も興味深く見守っていきたいと思います。
さて、独り勝ちといわれているAWSですが、近年、多数の競合サービスが増えたことによって、その立場をどこまで維持できるかは多くの企業が注目していることと思います。AWSのユーザー企業へ取材をしていても、「AWSを導入した当時は他に選択肢が無かったからAWSを選択したが、今後もっと良いサービスが現れれば移行したい」という発言をよく聞きます。一方、東急ハンズのように2014年度中には全てのシステムをAWSに移行すると宣言している企業もあり、クラウド業界は2015年も引き続き戦国時代だといえるでしょう。
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