マルチクラウドへの消極的な姿勢は、AWSやそのユーザー企業にどのような影響をもたらすのか。AWSのマルチクラウドに関連する取り組みと共に整理する。
MicrosoftとGoogleは、複数のクラウドを併用する「マルチクラウド」を採用するユーザー企業に向けて、自社のクラウドサービスを使いやすくするための戦略を進めている。Amazon Web Serviceは、マルチクラウドに対する戦略に、両社から一歩後れをとっており、自社サービスだけでユーザー企業のニーズを満たそうとしている。前編「なぜ“AWS縛り”ではなく『マルチクラウド』が選ばれるのか」と後編「AWSが『マルチクラウド』を無視できなくなる理由」に引き続き、AWSのマルチクラウド戦略を探る。
AWSはクラウドサービスと、ユーザー企業がオンプレミスのインフラに構築したプライベートクラウドを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」に関する取り組みをいち早く進めたベンダーだ。オンプレミスのインフラに導入したサーバ仮想化製品「VMware vSphere」で稼働する仮想マシンを、AWSにそのまま移行できるサービス「VMware Cloud on AWS」の提供を皮切りに、ハイブリッドクラウド市場に参入した。
ユーザー企業のオンプレミスのデータセンターでAWSサービスを実行するアプライアンス「AWS Outposts」の発表によって「AWSはハイブリッドクラウド市場に新しい風をもたらした」と語るのは、ハイブリッドクラウド構築支援を手掛けるUnitas Globalで最高技術責任者(CTO)を務めるグラント・カークウッド氏だ。「AWSは自社サービスのみで、複雑なクラウド環境を提供するという独特の立場を確立している」(カークウッド氏)
データセンターサービスを手掛けるEquinixで、AWSとの提携の指揮を執るコーシック・ジョシー氏は「AWSは、SAPやVMwareといったパートナーとの協業によって、既にマルチクラウドへの扉を開いている」と語る。このようなパートナーが提供するサービスを使用すると、ユーザー企業は既存のアプリケーションの再設計やリファクタリング(ソースコードの変更)をすることなくAWSサービスを利用できる。
依然としてAWSサービスだけを使ったシングルクラウドに満足するユーザー企業は少なくない。そのためAWSがマルチクラウドの取り組みを先送りにしても、このようなユーザー企業への影響はほとんどないはずだとハーツ氏は話す。
しかしマルチクラウド戦略の遅れは、企業買収やプライバシーの維持、パフォーマンスの向上といった観点から、マルチクラウドを必要としている大企業に少なからぬ影響を及ぼすと、住宅ローン向けクラウドサービスベンダーEllie Maeでクラウド運用のバイスプレジデントを務めるジャスティン・ブロドリー氏は推測する。マルチクラウドに精通したユーザー企業は、今後もマルチクラウドを継続して、各ベンダーが提供する製品やサービスを活用するだろう。それ以外の企業でも、マルチクラウドに対する需要は高まっている。
「AWSが取れる選択肢は、マルチクラウドの競争に再度加わるか、取り残されるかのどちらかだ」(カークウッド氏)
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